【韓国昔話33】賢い判決
昔、昔、ある村に賢い子供がいました。この子供は、村に何か難しい問題が起きてもすらすらと解決しました。
ある日のことでした。ある貧しい農夫がカワウソを追いかけていました。すると、突然、どこからか犬が現れ、カワウソにがぶりとかみついて、そのままくわえてもっていってしまいました。
農夫は、その犬の飼い主の家を訪ねていき、カワウソを返してほしいとたのみました。
犬の飼い主は、とてもお金持ちでした。しかし、カワウソの毛皮はとても高く売れるので、カワウソを返すのはもったいないと思いました。それで、農夫に言いました。
「あなたがカワウソを追いかけていたことを、どうやって証明しますか」
農夫は答えました。
「そのカワウソを捕まえるために、私は、朝から山に登って雪の中をかきわけてきたのです。ですから、私のズボンには、泥や木の葉がついているではないですか」
しかし、カワウソを返すつもりのない犬の飼い主は、
「いずれにしても、カワウソを捕まえたのはうちの犬です」
と言って、農夫の頼みを頑として受けつけませんでした。
結局、農夫は、郡の役所に行き、
「カワウソがどちらのものか、判決を下してください」
と郡守に頼みました。
郡守は、農夫の話と犬の飼い主の話を聞いてあげたのち、このように言いました。
「農夫がカワウソを追いかけ、そのカワウソを犬が捕まえたので、農夫にも、犬の飼い主にも、同じようにカワウソを手にする権利がある。だから、カワウソは、二人で半分ずつ分け合うようにしなさい」
郡守は、カワウソの毛皮を半分に切ってしまえば高く売れなくなることを知らないようでした。
農夫は、毛皮を半分にされてはたまらないと思って言いました。
「カワウソを見つけて穴をほったのは私です。村まで追いかけてきたのも私です。ですから、カワウソは、当然、私のものです」
犬の飼い主も、負けずにうったえました。
「しかし、カワウソを捕まえたのはうちの犬です。うちの犬がカワウソを捕まえなければ、取り逃がしていたかもしれないではないですか」
このように、農夫と犬の飼い主が互いにゆずらないので、郡守は困ってしまいました。
そのときです。賢い子供が前に進み出て言いました。
「私が判決を下してみます」
大胆な子供の言葉に、郡守は、しかたなく許可しました。郡守も、その子供の賢さを知っていたからです。
賢い子供が言いました。
「カワウソを追いかけたのは人であり、捕まえたのは犬です。人は、カワウソの毛皮がほしくて追いかけたのであり、犬は、カワウソの肉がほしくて捕まえたのです。したがって、毛皮は人のものであり、犬にはカワウソの肉をあげればよいでしょう」
子供の言葉を聞いて、そこに集まっていた村の人々は、なるほどとひざをたたきました。
郡守も、子供の判決は正しいと思って言いました。
「その子供の言うとおりにしなさい」
そのようにして、農夫は、小躍りして喜び、犬の飼い主は、毛皮を手に入れることができず、がっくりと肩を落としたそうです。
終