【韓国昔話32】犬とブタ
昔、ある村に、犬とブタを飼っているおばあさんがいました。
一人暮らしのおばあさんにとって、その犬とブタは家族のようなものでした。
犬は、おばあさんがどこかに出かけて帰ってくると、いつもしっぽをふって、おばあさんを出迎えました。
ブタも、おばあさんがくれるえさをおいしく食べて、まるまると育ちました。
おばあさんは、犬とブタを同じようにかわいがってあげました。
しかし、ブタは、自分より犬のほうがおばあさんにかわいがられていると思い込みました。
なぜなら、犬は、自由に庭をかけまわって遊んでいるのに、自分は、せまい小屋の中に閉じ込められていたからです。そのうえ、犬は、いつもおばあさんに頭をなでられていたからです。
ある日、ブタが犬にたずねました。
「なぜ、おまえばかりがおばあさんにかわいがられるのだ?」
「何だ、おまえはそれも分からないのか? それは、おれが毎晩、家の番をしているのに、おまえは毎日、ご飯ばかり食べて寝ているからだろう」
犬の言葉を聞いたブタは考えました。
「そうだ、きょうからおれも寝ないで家の番をしよう」
その日の晩、ブタは、夕暮れ時から「ぶうぶう」と鳴きはじめました。
おばあさんは、なぜブタが鳴くのだろうと思いましたが、たいしたことではないと思って床につきました。
ところが、ブタは、一晩中「ぶうぶうぶうぶう」と鳴きつづけるではありませんか。おばあさんは、ブタの鳴き声で一睡もすることができませんでした。
翌日、おばあさんは、ブタが病気になったと思い、医者を連れてきて、ブタのおしりにハリを打ってもらいました。
ブタは、一晩中、家の番をしたので、そのごほうびにハリを打ってもらったとかんちがいしました。
そして、その日の晩も、またその次の晩も、「ぶうぶうぶうぶう」と鳴きつづけました。
おばあさんは、ブタの鳴き声で何日も眠ることができませんでした。
しまいには、とうとう腹を立ててしまいました。
「なんだ、あのブタは。うるさくて寝られない。そうだ、あした市場に連れていって売ってしまおう。それしか方法はない」
このようにして、ブタは、市場で売られてしまったそうです。
終