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2014年03月16日

【韓国昔話10】召使の詩

【韓国昔話10】召使の詩

 昔、昔、あるところに狩りがとても好きな両班(ヤンパン)がいました。

 ところで、この両班はとてもケチで、召使たちに食べさせるご飯までも出し惜しみするほどでした。

 ある日、両班は、一人の召使を連れて狩りに行くことにしました。召使は、弓と矢を準備したのち、

「昼食は、どういたしましょうか」

と、両班にたずねました。

 すると、両班は、

 「なに? 仕事に行くわけでもないのに、ご飯など必要ないではないか!」

と言って、召使をどなりつけました。召使の昼食まで用意するくらいなら、いっそ二人とも昼食を抜かすほうがいいと思ったからです。

 両班は、雪がうずたかく積もった山を登りながら言いました。

 「このように雪がたくさん積もっているので、狩りをするにはとてもいいなあ」

 二人は、険しい山を登ったり、深い谷間を下りたりして、何も食べずに、一日中、狩りをしてまわりました。

 しかし、捕まえたものといえば、一羽のキジだけでした。とうとう、歩きつかれた召使が、雪の上に座り込んで言いました。

 「だんな様、おなかが空いて、もうこれ以上歩くことができません」

 すると、両班も、

 「私もおなかが空いて、これ以上歩くことができない。とにかく、そのキジでも焼いて食べよう」

と言いました。

 いくらケチな両班でも、おなかが空くことはどうすることもできませんでした。

 召使は、両班の言葉に喜び勇んで、あちこちから木の枝を拾って来て、火をおこしました。

 「ぱちぱち、ぱちぱち」

 木の枝が燃える音と共に、肉のあぶらがしたたり落ちました。両班と召使は、ごくりと、同時につばを飲み込みました。

 肉の香ばしいにおいが漂ってくると、両班は、だんだん肉をひとり占めしたくなりました。それで、何とか、その肉を自分一人で食べる方法はないものかと考えました。

 しばらくして、両班が召使に言いました。

 「おい、肉が完全に焼けるまで、詩を一首ずつ、つくることにしよう。そして、先に詩をつくった人が、キジの肉をすべて食べることにしよう」

 両班は、わざと召使にできないことを言い出したのです。

 「私のような者に、どんな詩をつくれというのですか」

 思ったとおり、召使はびっくりしてとびはねました。

 「言われたら、言われたとおりにすればいいだろう。ぶつくさ言うな。このような所に来て、ただ食べるだけなら、けものと同じではないか」

 両班は、うわべでは腹を立てるふりをしましたが、心の中ではしめしめと思いました。そして、自信満々な声で、

 「四行の詩をつくることにし、言葉の終わりには『か』という文字をつけることにしよう。おまえは無学なので、三行にしてもよい」

と言い、どんな詩をつくろうかと考えました。

 その時です。

 召使が、キジの片方の足を引き裂いて言いました。

 「もう肉は焼けただろうか。おいしいだろうか。どれ、一つ食べてみようか」

 そのように言うと、召使は、がつがつと肉を食べはじめました。

 「あっ、こいつ。詩もつくらずに食べるとは、どういうことだ!」

 両班は、腹を立てて大声をあげました。すると、召使は、

 「私は、言われたとおりにしただけですよ」

と言って、もう片方の足を引き裂いて言いました。

 「もう肉は焼けただろうか。おいしいだろうか。どれ、一つ食べてみようか。どうです、間違いなく、終わりに『か』という文字が入っているではありませんか」

 そう言って、召使は、残りの肉まですべて食べてしまいました。両班は、何も言い返すことができなかったそうです。

※両班‥‥家柄と身分の高い上流階級の人。

 

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