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2014年03月02日

【韓国昔話9】三年峠

【韓国昔話9】三年峠

 昔、ある村であった出来事です。

 その村には、傾斜が急な峠があり、ここで転ぶと、三年しか生きられないという言い伝えがあり、「三年峠」と呼ばれていました。

 それで、村の人々は、三年峠を通ることを嫌い、たまたま通ることになっても、転ばないように、とても気をつけて歩きました。

 ある日、一人のおじいさんが市場に行った帰り、三年峠を越えなければならなくなりました。

 おじいさんは、転ばないように、ノソノソと亀のようにはって、その峠を越えました。そして、ほとんど峠を登り終わったときです。腰を伸ばして立ち上がろうとした瞬間、おじいさんは、そのまま後ろにころっと転んでしまいました。

 「ああ、三年峠で転ぶとは! もう三年しか生きられないのか」

 おじいさんは、地をたたいて泣きました。

 「おばあさん、もう、わしは死んだ」

 肩をがくっと落として家に帰ってきたおじいさんが、おばあさんを見て、今にも泣き出しそうな顔をして言いました。

 「それはどういうことですか。このように何ともないのに死ぬなんて?」

 おばあさんは、心配そうな顔で聞きました。

 「三年峠で転んでしまったのだ」

 そう言って、おじいさんは、すすり泣きはじめました。

 「気をつけなければだめでしょう。こともあろうに、なぜ三年峠で転んだりしたのですか。ああ、どうしましょう?」

 おばあさんも、泣き顔になりました。

 この日以降、おじいさんは病気になって、床に伏してしまいました。

 おばあさんがお粥をつくってあげても、おじいさんは、

「三年しか生きられないのに、食べてどうするのだ」

 と言って、後ろを向いて横になってしまいました。

 おじいさんの病気は、日増しに深刻になっていきました。体に良いという薬を買ってきて飲んでも、心の病気はなおすことができませんでした。

 そのようなある日、隣の家に住んでいる少年が、おじいさんを訪ねてきて言いました。

 「おじいさん、長生きする方法があります」

 おじいさんは、少年の言葉を聞いて、がばっと跳ね起きました。

 「それは何だ? 早く話してみなさい」

 「もう一度、三年峠に行って転ぶのです」

 「何だと。三年峠でもう一度転べだと? おまえは、わしをからかっているのか」

 そう言って、おじいさんは、かっと腹を立てました。

 少年は、にこにこ笑いながら言いました。

 「おじいさん、私の話をよく聞いてください。三年峠で一度転べば、三年しか生きることができないのなら、二度転べば、六年、三度転べば、九年は生きられるのではないですか」

 少年の言葉を聞いて、おじいさんはひざをぽんとたたきました。

 「おお、そうか。そうだった。おまえの言うとおりだ。なぜもっと早く、そのことを思いつかなかったのか。すぐに三年峠に行って転ばなくちゃいかん」

 そう言って、おじいさんは、すぐに寝床から起き上がって、三年峠に駆けていきました。

 三年峠につくと、おじいさんは、そこでごろっと転がりました。

 「もうこれで、六年は長生きすることができるぞ」

 おじいさんは、再び立ち上がり、峠の上に登っていって、そこで何度も何度も繰り返して転がりました。そして、家に帰ってきて、以前のように健康に暮らしました。

 三年後、おじいさんは、市場に行った帰り、三年峠を越えているときに、突き出た石につまずいて転んでしまいました。

 「はっはっはっ。きょうで、三年峠で転んだ回数は五十回になったので、あと百五十年は生きられるな」

 おじいさんは、気分よく笑いながら、三年峠を下りていきました。そして、いつまでも幸せに暮らしたということです。

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