【韓国昔話38】先生を外に出した話
昔、昔、書堂で勉強を教えていた先生が、子供たちを呼んで言いました。
「おまえたち、私をこの部屋から出したら、おまえたちにほうびをやろう。その代わり、私が自分から進んで部屋の外に出るようにしなければならないよ」
「ほんとうですか、先生?」
子供たちはよろこびの声をあげました。そして、どうやって先生を外に出そうかと、あれこれ作戦をねりました。
しばらくして、一人の子供が大きな声で先生に言いました。
「先生! 外に先生のお友達がいらっしゃいました」
先生は、わざと、とぼけて答えました。
「それでは、そのかたを部屋の中にお通ししなさい」
次の子供が、また大声で言いました。
「先生! 書堂が火事になりました。早く逃げてください!」
先生は答えました。
「なに、あわてることはない」
また次の子供が大声で言いました。
「先生! 空からお金が雨のようにふってきました」
「それでは、すぐにひろってお母さんにもっていってさしあげなさい」
先生は、落ち着いた声で答えました。
書堂の子供たちが何を言っても、先生は部屋から一歩も出ませんでした。
しばらくして、一人の子供が先生に言いました。
「先生、先生を外にお出しすることは無理なようです。しかし、外にいらっしゃる先生を部屋の中にお入れすることはできます」
「そうか。それでは、私を部屋の中に入れてみなさい!」
先生は、立ち上がって部屋の外に出てきました。
すると、その子供がにっこり笑って言いました。
「先生! 部屋の外に出てこられましたね!」
そう言われて初めて先生は、子供の作戦にひっかかったことに気づきました。そして、書堂の子供たち全員にほうびをあげたそうです。
終