【韓国昔話22】ウサギのきも
深い深い海の底の竜宮に住んでいる竜王が、ある日、大きな病気にかかりました。
竜王の病気をみた医者は言いました。
「この病気をなおせる薬は、ウサギのきもしかありません」
竜王は、すぐに忠実なカメを呼んで言いました。
「海と陸を行き来するカメよ、行って、ウサギのきもを手に入れてきなさい」
「はい、竜王様! 陸に上がって、すぐにウサギのきもを手に入れてまいります」
陸に上がったカメは、うさぎを訪ねていって言いました。
「ウサギよ、私のあとについて海の中の竜宮に遊びにいこう。そこには不思議なものや、おいしいものがたくさんあるぞ!」
「ほんとうか? それなら、すぐに行ってみよう!」
カメは、うさぎにウソをついたことをすまなく思いましたが、竜王様の病気を治すためには仕方がありませんでした。
「ウサギよ、早く私の背中に乗りなさい!」
カメは、ウサギを乗せて海に入り、急いで竜宮に下りていきました。
竜宮に到着すると、カメは、ウサギをぎゅうぎゅうに縛り上げてしまいました。
「ウサギよ、竜宮様の病気をなおすには、おまえのきもが必要なのだ。すまないが、おまえのきもを竜宮様に差し出さなければならない」
カメにだまされたことを知ったウサギは腹を立てました。しかし、すぐに気を取り直して、どうやってここから逃れようかと必死に考えました。
しばらくして、ウサギが言いました。
「カメよ、分かった。私のきもを竜宮様にさしあげよう。しかし、私のきもはなにしろ貴重なので、いつも森の中にある岩の間にかくしてあるのだ。その場所を教えてあげるから、私を連れていってくれ」
その言葉を聞いたカメは、ウサギを背中に乗せて、再び海の上に上がっていきました。
海辺について陸に上がると、ウサギは、カメの背中からぽんと飛び降りました。そして、ぴょんぴょん跳ねて逃げていってしまいました。
あわてたカメに向かってウサギが言いました。
「や~い、あほうなカメよ。きもを取ったりつけたりする動物がどこにいるというのだ。おまえが先に私をだましたので、あんまりくやしく思うなよ!」
陸に上がったうさぎをつかまえることなど、カメにはとうてい無理な話でした。カメは、遠ざかっていくウサギを見ながら、がっくりと肩を落としたそうです。
終