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2014年02月09日

【韓国昔話6】牛になったなまけもの

【韓国昔話6】牛になったなまけもの

  

昔、働くのがとても嫌いな少年がいました。少年は、一日中ぶらぶら遊びながら、まったく家の仕事を手伝おうとしませんでした。

 父親が「たきぎを取ってきなさい」と言えば、こかげで昼寝をしたのち、空のしょいこをかついで帰ってくるのが常で、「牛にまぐさをやりなさい」と言えば、「おなかが痛い」と言って、腹をかかえてごろごろと転がりまわりました。

 そればかりではありません。

 毎日、日が高く昇ってから、ごそごそと起きてきて朝ご飯を食べ、着替えるのがめんどうで、むしむしする夏でも、厚い綿入れの服を着ていました。

 ある日、父親が息子に言いました。

 「もうすぐ結婚する年齢になるのに、このようになまけてばかりいてどうするのだ。息子よ、若いときに働かなければ、年を取ってから苦労するぞ」

 すると、少年は、

 「まったく、お父さん! 何を言っているのですか。若いときは、遊ばなければならないでしょう」

 と言って、部屋にごろんと寝そべってしまいました。

 父親は、あきれ返り、息子を起こして座らせ、厳しくしかりました。

 「これ以上ほうっておくことはできない。これから出かけていって、一緒に畑で草取りをするぞ」

 少年は、しかたなく父親の手に引かれて畑に出ていきました。しかし、草取りをするふりだけしたのち、父親の目を盗んで山に逃げていってしまいました。

 少年は、すずしいこかげで昼寝をしようと思い、あちらこちらを見まわしました。すると、一軒の古びた家を発見しました。

 「あれ? こんな所に家があったのか」

 少年は、首をかしげながら、門を開けて家の中に入ってみました。すると、そこには、髪の毛が真っ白のおじいさんが、一生懸命に何かをつくっていました。

 「おじいさん、何をつくっていらっしゃるのですか」

 少年は、おじいさんのそばに近づいていって聞きました。

 「ああ、これか。これは牛のお面だが、これをかぶれば、仕事をしなくても楽に暮らすことができるのだそうだ」

 少年の耳は、仕事をしなくてもよいという言葉にぴくりと耳を動かしました。それで、指でお面をそっとなでながら言いました。

 「おじいさん、少しだけお面をかぶってみてもいいですか」

 「ほっほっ、もちろんだとも」

 少年は、おじいさんがこころよく聞き入れてくれたので、とても喜び、すぐに牛の頭の形をしたお面をかぶってみました。すると、おじいさんが、横にあった牛の皮で、少年の体をまきつけました。

 少年はびっくりして大声を上げました。

 「おじいさん、何をするんですか。早くお面を取ってください」

 「やいっ。おまえは今から牛になったのだ。むだ口をたたかず、私についてこい」

 おじいさんの言葉を聞いた少年は、お面を脱ごうと思い、ありったけの力を出しました。しかし、お面は脱げませんでした。

 おじいさんは、牛をひっぱって、村の市場に行きました。少年は、何度も何度も、お面を取ってくれと叫びましたが、そのたびに、「モー、モー」という鳴き声が出るだけでした。

 「さあ買った、買った。力も強いし、仕事もよくする牛だよ!」

 おじいさんが、人々に向かって大声で言いました。すると、一人の農夫が近づいてきて、

 「自分がこの牛を買おう」

 と言いました。おじいさんは、農夫に、

 「この牛は、大根を食べると死にますよ。ですから、絶対に大根を食べさせてはいけませんよ」

 としっかりと言い聞かせたのち、お金をもらって、ゆうゆうと立ち去っていきました。

 その日から、牛になった少年は、朝早くから夜遅くまで、仕事ばかりさせられました。午前中は畑の草取りをし、少しでも昼寝をしようとすると、農夫が現れて、ほかの畑の草取りをさせるためにひっぱっていきました。

 少年は、ときどき、身もだえしながら叫びました。

 「私は、牛じゃない! 人ですよ!」

 しかし、少年の叫び声が牛の鳴き声にしか聞こえない農夫は、

 「なんだ、この牛は」

 と言いながら、むちで尻をぴしぴしとたたきました。

 少年は、それまでなまけて暮らしたことを心の底から反省しました。

 「私は、このような罰を受けて当然だ。もう一度人間に生まれれば、両親を助けて一生懸命に働くのだが‥‥。」

 少年の苦労は、日がたつほど、どんどん増していきました。少年は、何とかして牛のお面を脱ぎたいと思いましたが、方法は何もありませんでした。

 ある日、少年が、たまたま大根畑を通りがかかったとき、おじいさんが農夫に言った言葉を思い出しました。

 「そうだ。このように牛として生きるくらいなら、いっそ大根を食べて死んでしまったほうがましだ」

 少年は、大根畑に走っていって大根を抜いて食べました。すると、不思議なことに、少年の体からお面と皮がするすると取れて、人の姿に戻っていくではありませんか。

 少年はあまりにうれしくて涙を流しました。すぐに両親のいる家に戻ってきた少年は、それまでのことを悔い改めました。

 「お父さん、お母さん、今からはなまけずに、私は一生懸命に働きます」

 父親と母親は、びっくりしましたが、突然変わった息子の姿に喜びました。その後、息子は、仕事にも勉強にも精を出して暮らしたそうです。

 

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