https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4293

共産主義の新しいカタチ 49

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

霊的世界探る思想vs文化共産主義
唯物論と対峙した科学と哲学①

▲イマヌエル・スウェーデンボルグ(ウィキペディアより)

 フランクフルト学派の『啓蒙の弁証法』で評価したのが、キリスト教道徳を破壊するサド侯爵の「獣性」の価値観であり、ダーウィンとヘッケルの行き着いた、人間精神も動物から盲目的に進化したという価値観は、「反宗教的」「反道徳的」価値観として共通する部分があると言えます。

 そうした価値観と一線を画すのが、ウォレスらの人間の肉体とは別なところに、人間精神の深遠さや神秘性、霊魂不滅性があるのではないかと考え、科学者やジェームズなどの哲学者が目に見えない「人間の魂」「心霊主義」に実証的に迫ろうとした点について、第46回で触れました。

 ダーウィンの進化論や科学では未解明のものについて言及することは、学者として大変勇気のいる決断でしたが、それを回避せず正面から取り組もうとしたのが、ウォレスやジェームズだったと言えます。

 このような「科学と宗教の対決」はこの19世紀後半だけのことではありません。例えば鉱山学などで1718世紀の一流の科学者と見なされていたのが、スウェーデンのイマヌエル・スウェーデンボルグです。彼はキリスト教神秘主義の巨頭と目され、様々な予知能力で知られ、いわゆる彼岸、つまり霊的世界に行き来して自分の死の期日を正確に記録していた霊能者でした。

 前回の心霊主義に関し、降霊術が社会的に流行したことに言及しましたが、19世紀のこの「流行」では「インチキ」もあったとデボラ・ブラム著『幽霊を捕まえようとした科学者たち』では述べています。

 しかし、前回も若干ふれましたが「宗教は集団ヒステリー」と断言したフロイトとは袂を分かった弟子にあたるカール・グスタフ・ユングも、ジェームズやウォレスと同様に、「霊的能力」「超自然的力」を肯定する学者でした。

母方の家系が霊能力を持ったユング
 カール・グスタフ・ユングは、祖父のカールがバーゼル大学医学部教授で後に総長まで務め、父のパウルも旧約聖書のアラビア語訳の研究で博士の学位を得たアカデミックな家系に生まれました。しかしパウルは家庭の事情から研究職を諦め、牧師の道に進み、牧師の娘と結婚し、ユングが生まれました。精神的に病弱だった母エミーリエの代わりに父に育てられたユングは、家庭に母の不在とその代わりを務める父という構図で、夫婦仲も悪く、「頼れる父」がいないことを嘆くようになります。

▲カール・グスタフ・ユング(ウィキペディアより)

 牧師だった父のパウルは、好奇心に満ちた少年ユングから「神はどんな存在か」「どのような神体験をしたか」と聞かれ、ユングにとり「誰もが知っている、ひからびた公式的な神学上の答え」しかしなかったそうです。内的体験を期待したユングは何度も失望し、神学と教会が「神との直接的な関係」を築くことを塞いだと感じ、父に対して「信仰への懐疑」を感じ取ることになります。

 これでは、マルクスのように、いかにも無神論に傾きそうですが、ユング自身がそうならなかったのは、エミーリエもその母(つまり祖母)アウグステもいわゆる霊能者で、交霊会を催したりしていたためのようです。実はユングの妹ゲルトルードも霊能力があったようで、身近に霊的世界にふれていたこともあって、ユング自身も心霊現象や超心理現象に強い関心を抱いていたようです。

 この霊的世界、精神世界について西欧で探求してきたのがキリスト教的神秘主義の一つである「神智学」と言われる分野です。カントからフィヒテ・シェリング・へーゲルというドイツ観念論の哲学では、ドイツ神秘主義とも言われる神智学(ヤーコプ・ベーメ、マイスター・エックハルト、ゾイゼ、タウラーら)についてかなり肯定的な態度を取り、絶対者・最高存在としての神について語ろうとしました。

▲イマヌエル・カント(ウィキペディアより)

 カントは、現代では総じて、宗教的独断から哲学を分離した理性批判の哲学者として評価されますが、ユングはむしろ「霊魂不死」の擁護者カントとして、スウェーデンボルグとの関わりから捉えました(林道義『ユング思想の真髄』参照)。

 ユングはアンセルムスの「神の存在論的証明」へのカントの厳しい批判に同意しつつも、カントが霊界や超自然的なものを無闇に否定しなかった「科学的探求心」に敬意を表しているのです。カントも『視霊者の夢』で一目置いた稀代の霊能者スウェーデンボルグも実は、ベーメら神智学の系譜に連なっています。

(続く)

「思想新聞」2024年1月15日号より

ウェブサイト掲載ページはコチラ

勝共情報
国際勝共連合 街頭演説「進む日本文化の破壊」202519日 竹ノ塚駅

LINE勝共ラシンバン】
友だち追加、お待ちしております。
友だち追加はこちら↓