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facts_3分で社会を読み解く 31
公的機関による宗教マイノリティへの誹謗(ひぼう)中傷は違法か?

ナビゲーター:魚谷 俊輔

 一般社団法人UPF大阪が、大阪の三つの地方自治体を訴えた民事訴訟の判決が228日に大阪地裁で下され、UPF大阪が敗訴した件については、すでにこのシリーズの202434日付の記事で紹介した。

 UPF大阪は直ちに大阪高裁に控訴した。
 今回は、この判決に対する海外の有識者の反応を紹介したい。
 人権と宗教の自由に関するウェブニュース媒体「Bitter Winter」を主宰している、マッシモ・イントロヴィニエ氏の記事から、そのポイントを要約する。

 イントロヴィニエ氏は、この判決が間違っている根拠として、名誉および信用を不法に攻撃されない権利を定めた「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)の第17条を挙げている。
 日本はこの規約を批准しており、順守する義務がある。

 彼は、「国や地方自治体がある宗教団体について『反社会的』であると言えば、その名誉と名声に対する権利が危険にさらされ、差別を煽(あお)り、市民がどの宗教に入信するかを政府の圧力を受けずに決定する権利を妨げることになる。公的に『反社会的』であると宣言された宗教に入信するという汚名を、あえて被りたいと思う者がどこにいるであろうか?」と喝破した。

 さらに彼は、この事件に類似した欧州人権裁判所(ECHR)の判決を二つ引用している。

 一つはブルガリアのケースで、ブルガス市が市内の全ての公立学校に送った手紙に関するものだ。
 その内容は、モルモン教やエホバの証人などの教会を「カルト」であり、「危険」であると説明していた。
 2022年1213日にECHRは、公的機関が宗教的マイノリティに対して「危険」あるいは「カルト」と言うときには、常にそれに対する差別を生み出すと判示した。

 ECHRは2021年にもハレ・クリシュナ運動に関する訴訟において、ロシア政府がこの団体を公文書で「破壊的」であり「カルト」であると言うことはできないとの判決を下している。

 どちらの場合も、公的機関が発表した文書や文言には法的効力はなかったが、ECHRは地方自治体や中央政府のこうした声明は「当該教会の信者が信教の自由を行使する上で悪影響を与える」と述べた。

 彼らは差別される可能性が高く、宣教活動が困難になったり、不可能になったりする可能性があるというのである。

 欧州人権条約は、日本も批准している自由権規約と多くの共通点を持つ。
 従ってイントロヴィニエ氏は、大阪でもこれと同じ原則が適用されるべきであったと総括している。
 なお、UPF大阪の訴訟に対する大阪高裁の判決は、2024102日に下される予定である。

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