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facts_3分で社会を読み解く 26
フランスの改正「反カルト法」の問題点

ナビゲーター:魚谷 俊輔

 2024年49日にフランスの「反カルト法」が改正されたことを受けて、この法律の背景を説明するシリーズの5回目である。

 先回は、改正「反カルト法」が可決されるまでの紆余(うよ)曲折について説明した。
 今回はこの法律の問題点について詳しく解説しよう。

 新しい法案の核心は、「心理的服従」という新たな犯罪の創設にある。
 法案は以下のように述べている。

 「重大な、ないし、反復継続する圧迫、または、人の判断を変更させることができる技術の使用によって、人を心理的ないし身体的服従状態に置き、その人の身体的または精神的健康状態に重大な悪化を引き起こすか、あるいは、本人にとって極めて不利益な一定の作為・不作為に導いた者は、懲役3年および375千ユーロの罰金の刑に処せられる」

 ただし、その「精神的服従」が、未成年者または「年齢、病気、虚弱さ、肉体的または精神的な欠陥、妊娠などにより特別な脆弱(ぜいじゃく)性を抱えていることが明らかであるか、加害者に知られている人」を巻き込んだ場合には、刑罰は「懲役5年および75万ユーロの罰金」となる。

  「これらの違反が、あるグループの事実上または法律上のリーダーによって、その活動に参加する人々の心理的または身体的服従を生み出し、維持し、または利用する目的または効果を狙って行われた場合」、あるいは「違反がオンライン公共通信サービスの使用またはデジタルまたは電子媒体を通じて行われた場合」にも、同様の重罰が適用される。

 これは、「カルト」の指導者が違反した場合には罪が重く、ウェブサイトやソーシャルメディアを通じた「カルト」のプロパガンダもターゲットになっていると解釈できる。

 さらに、上記の状況のうち二つが同時に発生した場合、またはその違反が組織化されたギャングのメンバーによって犯された場合には、刑罰は7年間の懲役および100万ユーロの罰金に過重される。反カルト主義者にとって、「心理的服従」を実践する「カルト」は定義からして「組織化されたギャング」であるから、まさに「カルト」に厳しい法律といえるだろう。

 また、新型コロナウイルス感染症の期間中に「カルト」が成長し、一部が反ワクチンの考えを広めたという理由で、「必要な治療を放棄させるか受けさせないための挑発」という、懲役1年と罰金が科せられる新たな犯罪が創設された。

 以上のことから、この法律が極めて恣意(しい)的に「カルト」の活動を犯罪として取り締まり、厳罰に処することを可能にすることが分かるであろう。

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