2024.08.05 22:00
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フランスの改正「反カルト法」、日本への影響は?
ナビゲーター:魚谷 俊輔
2024年4月9日にフランスの「反カルト法」が改正されたことを受けて、この法律の背景を説明するシリーズの6回目である。
先回は、改正「反カルト法」の問題点について解説した。今回はその続きと、日本への影響について説明しよう。
新法が規定する「心理的服従」は、これまでの「脆弱(ぜいじゃく)性の悪用」の規定とどのように異なるのかといえば、これによって現行法では取り締まれない「カルト的逸脱」を犯罪化できることになる。
「脆弱性の悪用」はこれまで、被害者が「脆弱な状況」にあり、心理テクニックによって、例えば多額の献金をしたり、「カルト」リーダーに性的に身を委ねたりするなどの、自己加害行為に誘導された場合にのみ処罰された。
しかし新法では、被害者が「脆弱」な状況にある必要はない。誰もが「心理的服従」の被害者になる可能性があるというのだ。
さらに、被害者が自己加害行為に誘導されたことが証明できない場合でも、「心理的服従」を処罰することが可能になった。
単に「精神的健康の悪化」が起こったと主張するだけで有罪にできるのだ。
結局のところ、反カルト主義者たちは、「カルト」への加入やそこに留まり続けること自体が精神的健康にとって危険であると主張しているのである。
そしてこの理論を推し進めるために反カルト団体が裁判に参加することになり、疑問がある場合には検察官と裁判官はMIVILUDES(セクト的逸脱行為関係省庁警戒対策本部、フランスの政府機関)の意見を求めるよう助言されることになる。
フランス政府は、この新法によって信仰が犯罪化されるのではなく、特定の信念を奨励する技術のみが犯罪化されるのであると主張している。
しかし実際には技術を問題にしているのではなく、その信仰そのものが社会に受け入れられているか、「カルト」視されているかで有罪か無罪かが判断されることになるだろう。
さて、フランスの新法は日本にどのような影響を与えるのだろうか。
フランス政府の反カルト政策は、宗教の自由を尊重する西洋諸国を中心として、国際社会から批判されている。
これまでフランス政府は孤立していたが、最近は日本政府が反カルト政策を取ることになり、勇気づけられている。
すなわち、フランスと日本はお互いに励まし合い、正当化し合っているのだ。
こうした相乗効果により、日本の反カルト政策がフランスのモデルに従って強化されていく恐れがある。それに対する警戒が必要だ。
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