2024.07.22 22:00
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日本政府がセネガルで女性連合の学校を盗んだ?
ナビゲーター:魚谷 俊輔
マッシモ・イントロヴィニエ氏が運営する人権と信教の自由に関するウェブニュース媒体「Bitter Winter」に、世界平和女性連合(WFWP)がセネガルに建設した二つの学校を日本政府が「盗んだ」事件に関する記事が掲載された。
今回はそのポイントを解説したい。
この記事の主要部分は、マッシモ・イントロヴィニエ氏による堀守子WFWP日本会長に対するインタビューだ。それによると、事件のあらましは以下のようなものだ。
1995年より、WFWP日本はセネガルのダカール市で女性の経済的自立を支援する職業訓練校「JAMOO1」を運営してきた。
プロジェクト開始以来、全ての運営資金はWFWP日本支部とWFWP米国支部が負担してきた。
JAMOO1は2008年に国連経済社会理事会の「ミレニアム開発目標のベストプラクティス」に認定されるほど優秀な活動を展開してきた。
学校の評判を聞いて生徒数が増え、JAMOO1が手狭になったため、JAMOO1の校長は独自の校舎を建てる計画を立てた。
学校の状況を知ったセネガルの日本大使館の職員は、JAMOO1の校長に、日本の外務省の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」に応募するよう提案した。
その資金でセネガルにおけるWFWPの二つ目の職業訓練学校として、JAMOO2の運営が始まった。
ところが、安倍元首相暗殺後の2022年11月、日本の衆議院外務委員会で、日本共産党の穀田恵二議員が「日本国民の税金が家庭連合(旧統一教会)の関連団体が運営する学校に寄付されたことは大問題だ。返還すべきだ」と外務省を非難した。
これを受けて外務省は、同校は日本政府の事業であると主張し、建設だけでなく運営にも介入し始め、JAMOO2の校長に対してWFWP日本との関係を断つよう要求した。
彼らはJAMOO2とWFWPのつながりがないかを調査するため、使節団をセネガルに派遣し、学校からWFWPの痕跡を全て消すよう要請した。
具体的には校舎の壁、看板、制服、さらにはJAMOO2の証明書からWFWPのロゴを全て削除するよう求めた。
また、学校がWFWPプロジェクトとして登録されていたため、学校名、電話番号、メールアドレス、学校の登録情報を変更するよう求めた。
その後、学校は現地NGOに引き渡されるのではなく、日本政府が引き続き管理するように契約が変更された。
さらに2023年までに、JAMOO1は在校生がゼロになり、閉鎖に追い込まれた。
こうしてWFWPは、28年間支援してきたセネガルでのプロジェクトを失うことになった。
国連の承認を得てベストプラクティスとして掲載されていたこのプロジェクトを、日本国内の政治的な理由で奪われたWFWP関係者のショックは計り知れない。