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facts_3分で社会を読み解く 24
国連人権理事会が「宗教2世虐待Q&A」に懸念を提起

ナビゲーター:魚谷 俊輔

 国連人権理事会(UNHRC)の「宗教または信仰の自由」「教育の権利」など四つの分野に関する特別報告者が、厚生労働省が20221227日に発表した「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」(「Q&Aガイドライン」)に対して懸念を提起し、同ガイドラインの再考と見直しを要請する通達を出していたことがこのたび明らかになった。

 この通達は、「Q&Aガイドラインは、202278日に発生した安倍晋三元首相の暗殺事件後、一部の宗教的または信仰的少数派への監視とスティグマ(汚名)が増加した背景の中で策定され」たと断定している。

 この事件によって最も大きな被害を受けたのは家庭連合であるが、「宗教2世」の問題がマスコミで取り上げられるようになった結果、被害はエホバの証人にも拡大していった。
 その結果、エホバの証人に対する2023年のヘイト・クライムは、過去6年間と比較して638%増加したという。

 同通達は、厚生労働省が「Q&Aガイドライン」を作成するに当たって、宗教的マイノリティーに対する中傷発言を公にしてきた西田公昭氏が会長を務める「日本脱カルト協会」と協議する一方で、当事者であるエホバの証人やその他の宗教的マイノリティーとは一切協議しないばかりか、繰り返し要請される面会にも一切応じなかったことを問題視している。

 「Q&Aガイドライン」の具体的な内容で同通達が問題視しているのは、非宗教的な場合と比較して宗教的理由による虐待の成立要件が低く設定されているように見えることだ。
 例えば、宗教活動や宗教教義に基づく恐怖の「刷り込み」について、他の世俗的な活動や信条と比較して心理的虐待やネグレクトの成立要件が低くされているという。

 また「Q&Aガイドライン」は、「社会的慣習」「社会的相当性」「社会通念」からの逸脱といった曖昧な概念を、虐待の潜在的な形態を確立する基準としており、これによって信教の自由が制限される可能性があるという。

 これは中立・平等原則に違反する可能性があり、宗教的または信仰的少数派に対するさらなるスティグマや疑念を助長する恐れがあると同通達は懸念している。

 こうした問題についてエホバの証人は、こども家庭庁、特命担当大臣、内閣官房、および文科省、外務省、総務省、法務省の各省庁との会談を重ねて要求したが、全て拒否されたという。これはまさに家庭連合に対する解散命令請求を巡る政府の態度と同じものだ。

 当事者の話を聞かず、反対勢力の話だけを聞いて宗教的マイノリティーを規制しようとする日本政府の姿勢は、今後ますます国際社会からの批判を浴びるであろう。

【関連情報
世界日報デジタル
「国連人権理事会『宗教2世虐待Q&A』に懸念、日本政府に再考促す」

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