2024.07.08 22:00
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マッシモ・イントロヴィニエ氏が米国務省の「国際宗教自由報告書」を論評
ナビゲーター:魚谷 俊輔
6月26日に米国務省が公表した「国際宗教自由報告書2023年度版」に対する論評を、イタリアの宗教社会学者マッシモ・イントロヴィニエ氏が、同氏の運営する人権と信教の自由に関するウェブニュース媒体「Bitter Winter」に掲載した。今回はそのポイントを解説したい。
彼は米国務省の報告書について、「敵に対しては説得力を持って非難するが、政治的同盟者に対してはやや甘い」と総括している。
まず彼は、このような文書が存在すること自体に対して感謝すべきだと主張する。
この報告書では、世界各国の宗教の自由の状況に関する質の高いリポートがコンパクトにまとめられており、中国、ロシア、パキスタンに関する記述は高く評価できるという。
特に中国に関する部分の構成は説得力があり、模範的だということだ。
「全能神教会」と呼ばれる団体に対する中国政府の撲滅作戦は、熾烈(しれつ)を極めることが報告されている。
一方で、米国の重要かつ戦略的な同盟国とされているフランスや台湾に関する記述では、政府に対する批判は抑えられているという。
そうした中で注目されるのは日本である。さすがにこの報告書は、日本で家庭連合とエホバの証人に起きていることを無視することはできなかった。
同報告書は、昨年10月13日に東京地方裁判所が、文部科学省が提出した家庭連合に対する解散命令請求を正式に受理したことを報告している。
そしてこれまでは解散命令請求の要件は刑法違反であると解釈されてきたが、政府はその解釈を変更して、民法も解散の要件に含まれるとしたことにも言及している。
それでは、同報告書の日本に関する記述において、政府に対して「甘い」と感じる部分はどこなのであろうか。
彼の見解を要約すればこうだ。
国務省が中立の立場を貫いていることだ。報告書は政府の意見と、それに対する批判者の意見を並列で報告しているだけであり、国務省自体の立場は明示されていない。
ここで欠けているのは、安倍元首相暗殺後のキャンペーンと、日本の家庭連合とエホバの証人を標的とした政府の行動が、民主主義国家における21世紀最悪の宗教の自由の危機を生み出したという、明確な声明を国務省が発することだ。
米国務省が公表する国際宗教自由報告書は、世界で最も包括的で、最も優れた宗教の自由に関する政府報告書なのだから、政治的な慎重さを乗り越えて、この単純な真実をはっきりと述べてほしかったと思う。
【関連情報】
Bitter Winter 日本語記事:
「宗教の自由に関する米国務省の年次報告書:中国に対しては模範的だが、日本に対しては臆病」