もう、10年ほど前になります。
妻の母が亡くなり、故郷の自宅で親族や近所のかたに参列していただき、葬式をしていた時です。
「あっ!蝶々だ」
突然、黒いアゲハ蝶が家の中に入ってきて、祭壇のまわりをヒラヒラと飛んでいます。
しばらく飛び回ったあと、祭壇の生花にスッと止まりました。
「お父さん、蝶々がいるよ」
突然の蝶の飛び入りに、子供たちもびっくり。
おごそかな葬式の中で、真っ黒のアゲハ蝶はひときわ異彩を放っていました。
「きっと、おかあさんがお別れのあいさつに来たんだ」私は直感的に感じました。
葬家にとって葬式はとても忙しいものです。あれやこれやと対応しているうち、蝶の姿は忽然と消えていました。
思い起こせば、おかあさんには大変お世話になりました。
東京で暮らす私たちに赤ちゃんが誕生した時、すぐに飛んで来てくれました。
子供たちにお洋服を買ってくれたり、公園で遊んでくれました。
実家に帰省した時は、いつも美味しい料理をふるまってくれました。
振り返ると、ほんとに感謝の思い出ばかりです。
葬式は、多くのかたがたの協力を受け、無事に終了しました。
仕事の都合により、私たちはその日のうちに東京に帰ることになりました。
家族を車に乗せ出発しようとしたその時です。
ヒラリと、またあの黒いアゲハ蝶がやってきました。いったいどこから飛んで来たのだろう。
窓の外からこちらに向かってヒラヒラと舞い、私たち家族を見送っているようです。
「あ、蝶々がまた来たよ。おばあちゃん? おばあちゃんだよね?」
「さよなら~、おばあちゃ~ん」と、子供たち。
私には、「きーつげで、かえるんだよ~」と、おかあさんが言っているようでした。
親というものは、亡くなってからも、子供や孫のことが心配なんだなあ。
「おかあさん、親孝行できなくてごめんなさい」
「さよなら。今までほんとにありがとう。感謝してます」
私は心の中でお礼を述べました。
「黒い蝶には故人や先祖からの霊的なメッセージや守護がある」といわれています。
普段は見ることのない真っ黒なアゲハ蝶。今日は2回も会えました。
いや~、とても偶然とは思えませんが、こんなことってあるんですね!!
ちょっと不思議な体験をした素敵な1日でした。