『原理講論』には、「宗教と科学とは、人生の両面の無知を打開するための使命を、各々分担して出発したがゆえに、……人間がこの両面の無知を完全に克服して、本心の要求する善の目的を完全に成就するためには、いつかは、科学を探し求めてきた宗教と、宗教を探し求めてきた科学とを、統一された一つの課題として解決することのできる、新しい真理が現れなければならないのである」(pp.29-30)とある。
神と霊界が存在するか否かという問いは、宗教と科学を大きく分けてきた人類史的なテーマである。私たちは文鮮明先生のみ言や、多くの教会員たちの体験談を通して、神と霊界の存在を証してきた。しかし、神が実在し、霊界が存在するという事実は、そのことを信じられる者だけに必要な事柄ではないはずだ。神と霊界の存在について、広く一般社会に向かってどのようにそれを説明するのか。人々が神の実在と霊界の存在をいかに認識し、実感することができるのか、このことは常に問われてきたことである。なぜなら、万民にとって解決されなければならない人生の最重要課題だからだ。
NHKで放送されている「モーガン・フリーマン 時空を超えて」シリーズの「人間にとって『神』とは何か?」(2012年制作)という回を観た。この番組は、科学的なアプローチで死後の世界や宇宙人の存在など、未知の世界の探求をテーマに制作されたもので、米国の著名な俳優、モーガン・フリーマンがナビゲーターを務める。「人間にとって『神』とは何か?」もまた、心理学や脳神経科学の仮説や実験の成果をもとに構成されていた。同番組に限らず、最近、一般にテレビで放送されているこの手の番組は、脳科学のアプローチで構成されることが多く、脳科学の範囲で議論が行われ、結論も脳の作用の一つであるとされることが多い。視聴者もまた、番組の結論のように理解し、納得しているのではないか。
番組の最後でモーガン・フリーマンはこう結ぶ。
「人間が神をつくったのか、神が人間を創造したのか。人間の心や脳を知れば知るほど、どちらの考えも正しいと思えてきます。神は私たちが世界を見るための窓です。神とは何かと考えることは、人間とは何かと問うことにつながります。大いなる神は私たちの細部に宿り、神を信ずることは最も人間らしい行為なのです」
私たちは人間中心主義を超えた神主義、新しい真理を広く社会に知らせていかなければならない。しかし伝えるだけでは十分ではない。私たちには、社会の人々がそれを理解・納得し、人生の最重要事項として受け入れ得る情報コンテンツを制作し、発信していかなければならないミッションが残されている。