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ほぼ5分で読める勝共理論 56
天皇について④
天皇の人間の代表者としての立場

編集部編

神に祈りをささげる天皇
 前回は、天皇が神の子孫であること、日本の神とは自然そのものであること、だから天皇とは人間と共に生きる自然の代表者としての存在なのだ、ということを説明しました。

 この神のイメージは、皆さんのイメージと少し違うかもしれません。

 日本では、古くから神とは権力者や支配者ではありませんでした。
 日本には神道という宗教がありますが、神道の神とは自然のことです。
 実際に天皇が日本の歴史の中で支配者であったことは、長い歴史の中でほとんどありませんでした。

 今回は、天皇のもう一つの立場、つまり人間の代表者という立場について説明します。

 最初の天皇は、神武天皇という人でした。
 日本には『古事記』という歴史書があるのですが、この古事記によると、神武天皇は紀元前660年に奈良県の橿原(かしはら)という所で天皇に即位しました。
 その日が211日だったので、今でも211日は建国記念日です。

 ちなみに、『聖書』の記録によれば、紀元前660年というと、イスラエル王国が南北に分断していた頃に当たります。

 話を元に戻すと、天皇は神の子孫でありながら人間の姿をしていました。ですから天皇は、人間の代表者でもあります。人間の代表者として神に祈りをささげるのです。
 人々が豊かに暮らせるように、作物が取れるように、日照りが続かないように、大雨が降って洪水が起きないように祈る、これが天皇のもう一つの立場です。

 つまり天皇の存在を一言で表現すると、神(自然)と人間とをつなぐ存在だということです。
 天皇が神であるという意味で、「現人神(あらひとがみ)」という言葉がありますが、これは本来、支配者を意味する言葉ではありません。

 繰り返しますが、神というのは自然です。自然界において生きとし生けるもの全てが神です。
 その神の子孫として人間と共に生きる。そして人間のために祈る。これが天皇です。その本質は支配者ではありません。王ではありません。
 では何というかというと、こういう存在を「祭司」というのです。

祭司としての天皇
 祭司というのは、「祭祀(さいし)」を行う存在です。
 「祭司」と「祭祀」という二つの同じ発音の言葉があってややこしいのですが、祭祀というのはお祈りや儀式のことです。祭司というのはその祭祀を行う人のことです。

 祭祀のことを単に祭ともいいます。私が子供の頃は、祝日のことを「祝祭日」といっていました。祝日というのは単なる記念日です。宗教的な意味はありません。
 一方で、祭日というのは神社や宮中で祭が行われる日のことです。
 なぜ祝祭日といったのかというと、日本の祝日は基本的に天皇が宮中で祭祀を行う日だったからです。

 例えば、元旦は以前に説明したように、天皇が四方拝などの祭祀を行う日です。
 1123日は「勤労感謝の日」ですが、そもそもは労働者の権利を守るためにつくられた日ではありません。
 「新嘗祭(にいなめさい)」という五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈る祭祀があって、それを歴史的に天皇が宮中で行う日が1123日です。

 ちなみに祝日の中で7月の第3月曜日の「海の日」がありますが、これは明治天皇が東北地方を訪問した際に、720日に横浜港に入港して帰ってきたことから記念日となったものです。
 祭祀が行われる日ではないので単なる記念日だったのですが、最近になって祝日に格上げになったのです。
 こういうものを除いて、天皇誕生日を含めて日本の祝日は、そもそもは祭祀が行われる日でした。

 最近はあまり見なくなりましたが、昔は祝日に玄関に日の丸を掲げる家がたくさんありましたが、その理由もここにあります。
 つまり天皇とは、祭祀を行う祭司である。支配者ではない。これが天皇の存在なのです。

 では、祭祀とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
 そのことについては、また次回、お伝えします。

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