2024.11.28 12:00
ほぼ5分で読める勝共理論 57
天皇について⑤
天皇が祭司として行う宮中祭祀
編集部編
元旦に国家国民のために祈る天皇
前回まで、天皇の存在について説明してきました。
簡単に言うと、天皇とは支配者ではなく祭司である、国家国民のために神の子孫、人間の代表者として祈る存在である、ということです。
今回は、天皇が祭司として行う宮中祭祀(さいし)について紹介したいと思います。
宮中祭祀というのは、文字どおり宮中で行われる祭祀のことです。
宮中というのは皇居のことで、皇居というのは天皇が普段住んでいる場所です。江戸城があった場所で、東京の真ん中にあります。広さは東京ドーム25個分に相当します。
行ったことのないかたは、ぜひ一度、行ってみてはいかがでしょうか。
さて、宮中祭祀の数は年間で20回ほどあります。その中から、お正月の祭祀について説明しましょう。
天皇は大みそかの晩から身を清め、早朝4時ごろから準備を始めます。そして早朝5時30分ごろに「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」という特別な装束を着て出てこられます。もちろん外は真っ暗ですし、正月の早朝ですからかなりの寒さです。その中で、特別な庭の場所に出てこられます。
そこでまず、属星という特別な天皇の星に向かって拝礼します。
次に東西南北の四方の神様に拝礼します。
最後に父母の天皇陵に向かって拝礼します。
そしてそれぞれ、その年の国家国民の安寧や豊作などを祈る呪文を唱えます。
呪文の内容はかなり難解なのですが、分かりやすくいうと、この世で起こるさまざまな困難や災いは、全て私を通してください。全て自分の身が引き受けますから、国家国民を守ってください、というような意味になります。
このような祈りを、それぞれの神々に向かって唱えます。
そしてこの祭祀を行うのは天皇お一人なのですが、平成時代は上皇陛下がこの四方拝を行う間は、上皇后陛下もお近くで一緒に拝礼をし、祈っておられたということです。
憲法で定められた天皇の国事行為
この後も、元日はさまざまな儀式が分刻みのスケジュールで行われます。
9時45分から始まる「新年祝賀の儀」では、両陛下が皇族や元皇族、内閣総理大臣、閣僚、最高裁判所長官、宮内庁職員などから新年のあいさつを受けます。
これが午後まで続き、各国の駐在大使公使夫妻ともあいさつを交わします。この一日でお祝いを受ける人数は700人近くになります。これが天皇の元日です。
祭日でなくても、天皇は早朝に起きて、まず国家国民のために祈ります。そしてさまざまな役割をこなします。
さて、日本国憲法では、天皇の仕事は憲法の6条と7条にまとめられています。
具体的に数えると12項目あります。この12の仕事を国事行為といいます。
国事行為のうちの11項目は、日本国憲法によって定められたものです。
つまり日本国憲法ができてから、新しく天皇の役割としてできたものです。
それまで歴史的に天皇として行ってきた儀式は、全て12番目の「儀式を行うこと」に入ります。
ですから現在の天皇は、天皇が歴史的に果たしてきた儀式を行うことにプラスして、さらに憲法が定める11の仕事をします。
これは大変な勤めです。これをいかに果たしていくか…。
特に上皇陛下は、このことについて全身全霊で取り組み、そして模索してきたと語られました。
その背後には、やはり天皇の歴史的な役割があります。
この天皇の歴史性については、また次回お伝えしたいと思います。
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