2025.03.03 22:00
facts_3分で社会を読み解く 57
「不当寄附勧誘防止法」の問題点(6)
唯物的な世界観と消費者法の視点から宗教を捉えた法律
ナビゲーター:魚谷 俊輔
「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(不当寄附勧誘防止法)」は施行後2年が経過し、改正の時期を迎えている。この法律の問題点を指摘するシリーズ第6回である。
この法律はあまりにも拙速に制定されたため、国会における審議が十分に尽くされたとは言い難い。関係者の意見を聴取するなどの手続きも踏まれていないため、多くの不適切な規定が見られる。
この法律の制定により、宗教団体や宗教活動に対する誤った理解が広がることが懸念され、信教の自由を侵害するような不適切な適用がなされる恐れもある。
そもそもこの法律では、消費者契約法が引き合いに出されていることから、消費者契約法における消費者と事業者の関係を、寄付の勧誘を受ける個人と寄付の勧誘を行う法人などの関係に類比し、寄付による被害を消費者被害の類型で捉えていることが分かる。
しかもその主要なターゲットは宗教団体であることから、基本的に宗教問題を世俗的な消費者問題として捉えようとする法律であるといえる。
そうした根本的な問題から派生する具体的な条文の不備を見ていこう。
同法は第3章「法人等の配慮義務と禁止行為」において、法人などに、寄付の勧誘に当たって、個人の自由な意思を抑圧しないこと、判断が困難な状態に陥らせないこと、その個人の扶養者の生活を困窮させないこと、そして、その使途を誤解させないことなどの配慮義務などを課している。
この「自由な意思を抑圧する」ことには、「先祖の因縁」「先祖の供養」「地獄に堕(お)ちる」「不幸になる」という言辞を告げ、その教義を論述することもこれに当たるという説明もなされている。
しかしこれらは全て宗教にとって重要な教理や教義の一部をなすものである。
仏教では死後、閻魔大王ほか十王の審判を受け、罪の重い者は地獄に堕とされるとされており、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム(イスラム教)でも、地獄に堕ちるべき運命にある人間が信仰によって救済されると説いている。
古来、日本の仏教では地獄絵などを用いた死後の世界の説教が布教の重要な位置を占めていた。
キリスト教やイスラームにおいても地獄の教説が宣教、伝道、礼拝説教、信徒教育、幼児教育、児童教育において重要な位置を占めている。
これら全てが「自由な意思を抑圧」することになるというのであろうか。
要するにこの法律は、宗教を否定する唯物的な世界観に基づいて、消費者法の視点から宗教を捉え、世俗の法律によって宗教の教義を裁こうとする法律なのである。
この法律を改正するとすれば、こうした「配慮義務」が信教の自由を制限することがないように改めるべきである。