2025.02.18 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 354
キリスト教霊性とイグナチオの「霊操」④
修道霊性が生んだ宗教改革の二つの流れ
ナビゲーター:石丸 志信
13世紀に入って長き修道制の歴史に転機が訪れる。
それまで「西方修道制の父」と呼ばれたベネディクトの『戒律』に原点回帰することで刷新を続けてきた修道制だったが、新たな形態の修道運動が起こったのだ。
グスマンのドミニコが起こした「説教者兄弟会(ドミニコ会)」とアッシジのフランシスコが創設した「小さき兄弟会(フランシスコ会)」は、托鉢(たくはつ)修道会と呼ばれ、新たな潮流をつくっていく。
清貧・貞潔・従順を誓うのは変わらないにしても、托鉢をむねとし、田園生活から都市生活へとその拠点を移し、町々に出かけていって福音を説いていった。
改革の精神は、修道制の原点であるベネディクトの『戒律』に回帰するところからくるのではなく、イエス・キリストの福音に回帰し、み言のとおりに生きることに徹するところにあった。
それ故、彼らは宗教改革の先駆者であったといえる。また、この二つの托鉢修道会が、中世大学の神学部教授のポストを担い、キリスト教思想体系の構築に寄与し、中世最盛期をもたらした。
古代、中世と刷新を繰り返しながら発展してきた修道霊性は、16世紀の宗教改革の原動力となり、近世の扉を開く。
宗教改革の烽火(のろし)を上げるマルティン・ルターは、元は托鉢修道会の一つアウグスチノ会の修道士であり、聖職者、神学者となった人物だった。
彼自身の修道士としての修練と神学的探求を土台として、プロテスタント改革運動へと発展していった。
ルターは聖書をドイツ語に翻訳し、聖職者を介さず誰もが聖書を読み、一人一人主体的に神に祈ることができる道を開いた。
一方、ルターを破門に処したカトリック教会内でも霊的覚醒と刷新の動きがあった。その代表者の一人がイエズス会を創設したイグナチオ・デ・ロヨラであった。
彼もまた、神の召命を受けてからキリストに倣う生き方を独自に追求しながら、新たな使命に目覚める。
彼は、イエス・キリストが使徒たちに命じた「全世界に行って福音を宣(の)べ伝えること」を自らに託された使命と受け止めた。
その使命を果たす準備の歩みは、あたかも千年の修道制の歴史を追体験し、その伝統を相続していくようなものであった。
修道霊性の命脈は、一つはルターを通してプロテスタント運動につながり、もう一つはカトリック改革の雄(ゆう)であるイグナチオに流れ込んで、イエズス会を生みだし、世界宣教へと駆り立てていった。
プロテスタント運動に先駆けて世界宣教に乗り出し、キリスト教の版図を大きく拡大していったイエズス会の霊性というべきものを表すものの一つが、イグナチオが自らの心霊の成長のために記した一冊の霊的指導書『霊操』だった。
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