2025.02.17 22:00
facts_3分で社会を読み解く 55
「不当寄附勧誘防止法」の問題点(4)
自己保身のために譲歩を繰り返した岸田首相
ナビゲーター:魚谷 俊輔
「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(不当寄附勧誘防止法)」は施行後2年が経過し、改正の時期を迎えている。この法律の問題点を指摘するシリーズ第4回である。
この法律の重大な問題の一つは、文言としては入らなかったものの、「配慮義務」という形で「マインド・コントロール言説」を前提とした考え方が紛れ込み、それによって宗教活動を事実上規制しようとしている点である。
もともと自民党は、「マインド・コントロール」による寄付の規制については、法律で禁止することは難しいとの姿勢を示していた。
そもそも「マインド・コントロール」はせいぜい流行語や俗語のレベルの言葉であって、科学的にもその効果は立証されておらず、あまりにも多義的過ぎて、その言葉をそのまま使って法律を作ることは不可能である。
法律として定めるには、基準が明確で、憲法適合性があり、過剰な規制にならないなどの条件をクリアしなければならない。
その観点から自民党側は、法文上の文言として「マインド・コントロール」を独立して定義することは困難であると主張した。
しかしゼロ回答では野党を納得させることはできないので、「マインド・コントロール」という言葉を法案に盛り込まないという原則を貫く一方で、寄付を勧誘する法人側に「自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状況に陥ることがないようにする」という「配慮義務」を課す修正案を提示したのである。
野党側は、特に立憲が「配慮義務」ではなく「禁止行為」にすべきだと頑張ったが、自民党が維新を巻き込んで「配慮義務」で決着させる流れを作り、最終的には「十分に配慮する」と表現することで立憲の賛成も取りつけることに成功した。
言ってみれば政治的駆け引きの産物なのだが、これによって最悪の事態が避けられた一方で、微妙な表現で「マインド・コントロール言説」を法案に紛れ込ませるという妥協をせざるを得なくなってしまった。
最も懸念されるのは、岸田首相(当時)が2022年12月6日の国会答弁で、「いわゆるマインド・コントロールによる寄付については、多くの場合不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものといえ、新法案による取消権の対象となると考えられる」と発言したことだ。
これは新法の適用に当たって「マインド・コントロール言説」に対して首相が「お墨付き」を与えたとの解釈を可能にするもので、野党に対する妥協にも程があると言いたい。
何としても会期中に成立させなければならないマストの法案であるが故に、岸田首相は野党に追及されるままに譲歩を繰り返した。全ては自己保身のためである。