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ダーウィニズムを超えて 98

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第八章 宇宙の統一原理に向けて

(三)対称性の破れ

5)対称性の自発的破れ
 1961年、南部陽一郎は「対称性の自発的破れ」という論文を発表した。水が氷になると対称性が自発的に破れるように、ビッグバン以来、宇宙は対称性の破れを幾度も繰り返しながら現在の姿に至ったと考えられている。この論文の中で南部は、すべての素粒子はもともと質量がゼロであったが、対称性が破れることによって、特定の質量を持つようになったと述べた。南部は2008年、「対称性の自発的破れ」理論によりノーベル物理学賞を受賞した。南部陽一郎は素粒子物理学の基礎的な理論をいくつも提示して、標準理論の半分くらいは南部が作ったと言われるくらいの物理学の巨人であった。

 南部の考えに基づいて、素粒子が質量を獲得するメカニズムを理論的に予測したのが、イギリスの理論物理学者ピーター・ヒッグス(Peter W. Higgs)であった。このメカニズムにおいて、ヒッグス場とヒッグス粒子の存在が要請された。そして2012年、ヒッグス粒子が確認され、2013年、ヒッグスは似たようなメカニズムを提示していたフランソワ・アングレール(Francois Englert)と共にノーベル物理学賞を受賞した。

 レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒルは、宇宙の対称性の破れについて、神の館が壊れたと表現している。そしてその引き金を引いたのがヒッグス粒子だという。

 宇宙が膨張して冷えるうちに、対称性は次々と崩れて瓦礫(がれき)の山となり、粒子は質量を背負わされ、人間が今日目にしている低エネルギーの物質世界が姿を現した。その世界では、基礎となる標準理論はほとんど見えなくなっている。……神々の黄昏が訪れて、対称性は打ち砕かれ、ワルハラは廃虚になった。ウォータンの娘であるワルキューレのブリユンヒルデがその出来事の引き金を引いたように、原初の宇宙で成り立っていた標準理論の対称性が崩れ去るという出来事にも、その引き金を引いたものがいるそれがヒッグス粒子なのだ(*43)。(太字は引用者)

 そして完全な対称性である神の世界から、対称性が破れて時空の広がった宇宙が現れたと言う。

 ビッグバンの大爆発は、それにつづく瞬間に起こった大規模な対称性の破れの事象であったのかもしれない。この壮大な対称性の破れが、「インフレーション」と呼ばれる過程を通して、空虚をほぼなくして空間と時間の膨大な広がりを生み出したのかもしれない。エデンに戻るということは、その優雅な最初の対称的状態を再現するという理論的な課題である(*44)。(太字は引用者)


*43 レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル、青木薫訳『量子物理学の発見』文藝春秋、2016年、146頁。
*44 レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル、小林茂樹訳『対称性』白揚社、2008年、250

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 次回は、「パリティ対称性、CP対称性」をお届けします。


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