2025.02.23 22:00
ダーウィニズムを超えて 99
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第八章 宇宙の統一原理に向けて
(三)対称性の破れ
(6)パリティ対称性、CP対称性
素粒子の対称性について、Pとは、鏡映操作(空間反転)を行って、粒子のスピンの回転方向(左巻きと右巻き)を逆転させることをいい、Cとは、粒子を反粒子に変えることであり、そのような変換を行っても粒子の法則が不変であるとき、対称性を持つという。
P(鏡映操作)をおこなっても不変であることをパリティが保存されているというが、1956年のT・D・リー(李政道)とC・N・ヤン(楊振寧)の論文、1957年の女性物理学者C・S・ウー(呉健雄)の実験により、パリティは「弱い力」において破れていることが明らかにされた。1957年、リーとヤンはノーベル物理学賞を受賞した。
ハーバード大学物理学教授のリサ・ランドール(Lisa Randall)は、パリティの破れについて、なぜそうなるか不明であると言う。
弱い力が右と左を識別することである。物理学用語で言えば、「パリティ対称性(空間反転対称性、P対称性)を破る」のである。……弱い力は、右回りの粒子と左回りの粒子に対して違う作用のしかたをすることで、パリティ対称性を破る。そして、弱い力の作用を受けるのは左回りの粒子だけなのである。たとえば左回りの電子は弱い力の作用を受けるが、右回りの電子は受けない。実験はこれを明らかに証明している——世界がそのように動いている——が、なぜそうなるかは直観的にも力学的にも説明されない(*45)。(太字は引用者)
パリティ対称性が破れたとしても、CとPを組み合わせたCP変換を行えば、対称性は守られていると考えられたが、その後、1964年、アメリカの物理学者のヴァル・フィッチ(Val Fitch)とジェームズ・クローニン(James Cronin)により、中性K中間子崩壊においてCP対称性が破れていることが明らかにされた。両者は1980年、CP対称性の破れの発見によりノーベル物理学賞を受賞した。
このCP対称性の破れを理論的に説明したのが、小林誠・益川敏英による「小林・益川理論」であった。まだクォークの第二世代のチャームクォークも発見されていない段階で、彼らが「クォークは三世代あるはずだ」と予言したのは、この「CP対称性の破れ」を理論的に説明するためであった。高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授の小林誠と京都大学名誉教授の益川敏英は、南部陽一郎と共に2008年のノーベル物理学賞を受賞した。
レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒルは、CP対称性の破れは、われわれの宇宙では願ってもないことであったと言う。
もしCPが実際に自然の完全な対称性であったとすれば、われわれの宇宙はまったく異なるものになっていたに違いなく、太陽系、星、銀河、そしてわれわれ自身がおそらく存在しなかっただろうということがわかってきた。……CP対称性の破れは、粒子と反粒子がいくらか違うふるまいをすることを示している。実際、CPの破れは宇宙では願ってもないことで、「宇宙には物質だけが存在して反物質が存在しないように見えるのはなぜか」というもう一つの難問に答えるための必要条件である(*46)。(太字は引用者)
しかしCP対称性の破れだけでは、現存する宇宙の形成に至る物質と反物質の非対称を説明するには不十分であって、物質と反物質の非対称の謎はいまだ未解決のままなのである。
*45 リサ・ランドール、向山信治監訳、塩原通緒訳『ワープする宇宙』NHK出版、2007年、229~231頁。
*46 レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル、小林茂樹訳『対称性』白揚社、2008年、244~245頁。
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次回は、「主体・対象の二性性相の神」をお届けします。