https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4290

ダーウィニズムを超えて 96

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第八章 宇宙の統一原理に向けて

(三)対称性の破れ

2)物質と反物質の非対称
 ディラックの方程式とその解釈によると、物質と反物質は対等な立場で存在しているはずである。すると、ビッグバンでは物質と反物質が等量できたはずだと考えられる。しかし、物質と反物質は出会うと対消滅してガンマ線になる。すると宇宙は存在するはずがない。宇宙は通常の物質が満ちあふれているのでなく、飛び交うガンマ線ばかりになるはずである。したがって宇宙が存在しているということは、ビッグバンは、完全に対称ではなかったということになる。

 キャサリン・フリースは「素粒子物理学において重要な未解決問題の一つが、物質と反物質の非対称性である(*37)」と言い、マルセロ・グライサーも「反物質よりも物質が過剰に存在するという自然の非対称性は、数十年に及ぶ研究にもかかわらず、未だ謎のままだ(*38)」と言う。

 ミチオ・カク(Michio Kaku)は、宇宙を生じせしめた「無」には、対称性の破れがあったかもしれないと、次のように言う。

 宇宙創成の瞬間、物質と反物質のあいだでごくわずかな対称性の破れが生じたため、物質が反物質より優勢になり、今ある宇宙ができたというわけだ(ビッグバンの際に破れた対称性はCP対称性といい、物質粒子と反物質粒子の荷量やパリティを反転させた場合の対称性を意味する)。宇宙が「無」から生じたとしても、ひょっとしたら無はまったくの空っぽではなく、わずかに対称性の破れがあるかもしれず、それなら現在物質が反物質よりわずかに優勢であってもいい。この対称性の破れがどうして起きたのかは、まだ解明されていない(*39)。(太字は引用者)

 ローレンス・クラウスは「量子的なプロセスが、ほとんど感知できないほど微妙なさじ加減で」、初期宇宙を現在の宇宙へと容赦なく追い立てたという。

 初期宇宙で起こったこのプロセスは、完全に解明されているわけではない。というのも、この非対称性が生じたミクロの世界の性質が、まだよくわかっていないからだ。……初期宇宙の高温にある素粒子が関与する量子的なプロセスが、ほとんど感知できないほど微妙なさじ加減で、空っぽの宇宙を(あるいは同じことだが、物質と反物質が同量存在していた初期宇宙を)、物質または反物質が支配的であるような宇宙へと容赦なく追い立てたということだ(*40)。(太字は引用者)


*37 キャサリン・フリース、水谷淳訳『宇宙を創るダークマター』日本評論社、2015年、109頁。
*38 マルセロ・グライサー、藤田貢崇訳『物理学は世界をどこまで解明できるか』白揚社、2017年、314頁。
*39 ミチオ・カク、斉藤隆央訳『パラレルワールド』NHK出版、2006年、120頁。
*40 ローレンス・クラウス、青木薫訳『宇宙が始まる前には何があったのか?』文藝春秋、2013年、226

---

 次回は、「ネーターの定理」をお届けします。


◆『ダーウィニズムを超えて』を書籍でご覧になりたいかたはコチラ