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ダーウィニズムを超えて 95

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第八章 宇宙の統一原理に向けて

(三)対称性の破れ

1)原初の対称性
 原初の宇宙には、高度な対称性が成り立っていたと考えられている。ブライアン・グリーンは次のように言う。

 熱と対称性のあいだには重要な相互依存性があるため、私たちが今日目にする光景は、宇宙が冷えるにつれて失われていった豊かな対称性の残余にすぎないらしいのだ。初期宇宙の高い対称性は、当時の宇宙を形作っただけでなく、私たちもよく知っている、もっとも重要な宇宙の特徴のいくつかを決定したのである(*30)。(太字は引用者)

 1988年、ミューニュートリノの発見によりノーベル物理学賞を受賞した実験物理学者のレオン・レーダーマン(Leon Lederman)は、理論物理学者のクリストファー・ヒル(Christopher Hill)との共著『対称性』の中で、「対称性は最も深いレベルで自然を統御している(*31)」と言い、至上の対称性、統一の原理が働いている世界について言及している。

 今日では、自然を理解するうえで、この対称性がきわめて重要であることがわかっている。ひとことで言えば、われわれの住むこの世界は、対称性に支配されているのだ。しかし対称性はしばしば、隠れていたり、あるとは思えなかったり、「破れて」いるように見えたりする。そして、まさにそれこそが、標準理論から得られた大きな教訓なのだ。標準理論は、自然のすべての力を、ひとつの理論的な枠組みの中で統一しようとするものだが、それをするために、あらゆる粒子が質量を持たず、至上の対称性が成り立っている、完璧な世界を想定する。統一の原理が働いているのは、そんな世界でなのだ(*32)。(太字は引用者)

 ニューヨーク市立大学理論物理学教授で超ひも理論の権威であるミチオ・カクは原初の宇宙において四つの力が超力(スーパーフォース)として、一つになっていたと言う。

 この統合の企図が、宇宙論に新しいパラダイムを持ち込んだ。ビッグバンの瞬間、四つの基本的な力はひとつの力——謎めいた「超力(スーパーフォース)」——にまとまっていたという、単純でエレガントな概念である。このとき、四つの力はどれも同じ強さで、大きなまとまりの一部だった。宇宙は完璧な状態で始まったのだ(*33)。(太字は引用者)

 レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒルは、原初の世界について、「質量のない世界、完璧な対称性が成り立つ神々の世界では、粒子はつねに光速で突き進んでいる(*34)」と言い、そのような世界は、「数学的で対称的なエデンの園(*35)」であり、「ウォータン(オーディン)のワルハラ(神の館)(*36)」であったと言う。すなわち、そのような原初の宇宙における対称性は、神の世界、神の館であったというのである。(太字は引用者)


*30 ブライアン・グリーン、青木薫訳『宇宙を織りなすもの・上』407頁。
*31 レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル、小林茂樹訳『対称性』白揚社、2008年、100頁。
*32 レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル、青木薫訳『量子物理学の発見』文藝春秋、2016年、145頁。
*33 ミチオ・カク、斉藤隆央訳『パラレルワールド』NHK出版、2006年、106頁。
*34 レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル『量子物理学の発見』153頁。
*35 レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル『対称性』250頁。
*36 レオン・レーダーマン、クリストファー・ヒル『量子物理学の発見』146

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 次回は、「物質と反物質の非対称」をお届けします。


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