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ダーウィニズムを超えて 94

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第八章 宇宙の統一原理に向けて

(二)宇宙定数の謎

7)統一思想の見解神のなせる業
 ダートマス大学の理論物理学教授のマルセロ・グライサー(Marcelo Gleiser)は「宇宙の生成は神業のようである」と言う。

 暗黒エネルギーは、宇宙における明るいもの暗いもの、すべてのなかでもっとも大量に存在しているだけでなく、それらの宇宙密度に対する寄与を足し合わせると臨界密度に達するのである。これはあまりにも出来すぎてはいまいか。すべての候補となる数値のうち宇宙の密度が臨界値にほぼ等しい。現在の観測値では、宇宙の密度は臨界値とおよそ0.05パーセントの精度で等しい。一見すると、臨界密度にぴたりと一致する宇宙は、神のなせる業のようである。しかしより注意深く考えれば、生命を生み出すことができる宇宙は強い制約を満たさなければならないことがわかる。密度が低すぎても高すぎてもダメなのだ。……実際、私たちの宇宙が生命にとって「あつらえ向き」であると考えたくなる(*26)。(太字は引用者)

 アレックス・ビレンケンは「生命と知性が存在できるように定数を入念に調節した神」に言及している。

 神が定数を選択したというのは、ずいぶん都合のよい話だと思うかもしれません。しかし、驚くべきことに、その背後にはひとつのシステムがあるように見えるのです。けれども、それは物理学者が望んでいたようなものではありません。物理学のさまざまな領域における研究によって、宇宙の多くの本質的な特徴が自然定数のいくつかの値にたいへん敏感なことが示されました。もし神がノブをほんのちょっと違った風に調節したら、宇宙はまったく違った場所になってしまうのです。するとほぼ確実に、私たち人間も、またほかのあらゆる生き物も、宇宙の中に存在できなくなってしまいます。……

 宇宙の中の私たちの存在が危うい不安定なバランスに依存していることを示す例は、このようにたくさんあります。そのバランスは、自然定数の値が現在と大幅に違ったとしたら、たちまち崩れてしまうでしょう。自然定数がこのようにうまく調整されていることをどう考えればよいのでしょうか? それは生命と知性が存在できるように定数を入念に調節した神を示しているのでしょうか?(*27)(太字は引用者)

 そしてレオナルド・サスキンドは「自然の法則は、数学的な簡潔さやエレガンスを持つ規則に従っているというより、私たちの存在に合わせて特別につくられたように見える(*28)」と言い、「小さな宇宙定数もインフレーションが続く適切な期間も、どちらも、非常に精密に調整されなければならない。前にも述べたように、宇宙は特別に設計されたように見える*29)」(太字は引用者)と言う。

 しかし彼らは、神の創造の業のようだと言いながら、宇宙は無限にあるというマルチバース、あるいはランドスケープ的なひも理論の立場から、神による創造を認めようとしない。

 ダーウィンは、生物にはデザインがあるように見えるが、それを変異と自然選択によるものとして、デザインを否定した。しかしダーウィンの進化論の誤りが明らかになり、生物にデザインを認めざるを得ないということになれば、当然のことながら、宇宙においても、マルチバースやランドスケープ的なひも理論に頼ることなく、創造主によるデザインあるいは設計図を認めざるを得なくなるであろう。

 宇宙定数問題——「空っぽの空間のエネルギーはゼロでないばかりか、素粒子物理学の理論から予想された値よりも百二十桁も小さい」——に関して言えば、宇宙の背後にある神の有するエネルギーは宇宙に現れたエネルギーに比べて、無限と言ってよいくらい、莫大(ばくだい)なものであると理解することができよう。


*26 マルセロ・グライサー、藤田貢崇訳『物理学は世界をどこまで解明できるか』白揚社、2017年、127128頁。
*27 アレックス・ビレンケン、村田陽子訳『多世界宇宙の探検』日経BP社、2007年、216221頁。
*28 レオナルド・サスキンド、村田陽子訳『宇宙のランドスケープ』日経BP社、2006年、170頁。
*29 同上、218

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 次回は、「原初の対称性」をお届けします。


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