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ダーウィニズムを超えて 93

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第八章 宇宙の統一原理に向けて

(二)宇宙定数の謎

6)われわれは「特別な」時期に生きている —「偶然性問題」—
 アレックス・ビレンケンは「自然が私たちに何かを伝えようとしているかのようだ」と次のように言う。

 このように宇宙のほとんどの歴史を通じて、物質密度は真空の質量(エネルギー)密度とは大きく異なった値をとります。それならばなぜ、ふたつの密度がよく似た値をとる時期に、私たちは生まれあわせたのでしょうか? 物質密度の変化の範囲が極めて大きいことを考えれば、この偶然は非常に奇妙なことなので、それを「単なる偶然」として片付けるわけにはいきません。それはまるで、自然が私たちに何かを伝えようとしているかのようです。しかし、自然はいつもそうですが、簡単にわかるようにはできていません。なぜ宇宙定数のような自然の基本定数が、私たち人間がたまたま存在する特別な時期の物質密度と関連するのでしょうか?(*22)(太字は引用者)

 キャサリン・フリースは「ダークエネルギーが支配的な要素となった時代は、生命誕生の機が熟した時代と一致している」のであり、それは奇妙な偶然の一致であると言う。

 真空エネルギーは値が小さいため、宇宙の歴史の大半を通じて取るに足らない存在だった。物質と放射が支配し、宇宙の膨張は減速していた。しかし時間が経つにつれ、膨張によって物質が薄まる一方、宇宙定数は一定の値を保った。やがて、ダークマターがダークエネルギーに道を譲った。そして宇宙は加速状態に切り替わった。しかし、奇妙なのはそのタイミングである。ダークエネルギーが支配的な要素となった時代は、生命誕生の機が熟した時代と一致しているのだ。宇宙論学者は、この奇妙な偶然の一致を説明するのに苦労している(*23)。(太字は引用者)

 そして彼女は、「この二つの値を、宇宙の歴史のなかでもちょうど現在という時代におおよそ同じにするようなメカニズムは、基礎物理学のどんな側面を考えてもなかなか思い浮かばない。ダークエネルギーを説明するのに必要なΛ(ラムダ)の値の由来は、まったくの謎なのだ(*24)」と言う。

 ローレンス・クラウスは「わたしたちが今の時代に生きているのは、ラッキーだと考えることができる。……われわれはきわめて特殊な時代に生きている。……それは、われわれがきわめて特殊な時代に生きているということを、観測によって証明できる唯一の時代なのだ!(*25)」と言う。


*22 アレックス・ビレンケン、村田陽子訳『多世界宇宙の探検』日経BP社、2007年、212頁。
*23 キャサリン・フリース、水谷淳訳『宇宙を創るダークマター』日本評論社、2015年、263264頁。
*24 同上、264頁。
*25 ローレンス・クラウス、青木薫訳『宇宙が始まる前には何があったのか?』文藝春秋、2013年、176

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 次回は、「統一思想の見解 —神のなせる業—」をお届けします。


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