世界はどこに向かうのか 334
「常識の革命」～共産主義との最終決戦が始まる

2025.01.28 17:00

世界はどこに向かうのか
～情報分析者の視点～

トランプ大統領の「常識の革命」～共産主義との最終決戦が始まる

渡邊芳雄（国際平和研究所所長）

　今回は、1月20日から26日までを振り返ります。

　この間、以下のような出来事がありました。

　ドナルド・トランプ氏、第47代米国大統領に就任（1月20日）。韓国・尹錫悦（ユン・ソンニョル）大統領が弾劾裁判に出席、現職大統領では史上初（21日）。マイク・ポンペオ氏ら警護対象から除外（22日）。ケネディ氏暗殺文書公開へ、大統領令（23日）。マルコ・ルビオ氏「米国第一」対中政策伝達、外相会談（24日）。ドイツ右派集会にマスク氏登場、「欧州各国は自主性を」（25日）、などです。

　ドナルド・トランプ氏の第47代米国大統領就任式が1月20日（日本時間21日）、首都ワシントンで行われました。
　第2次政権は、昨年11月の大統領選、上院選、下院選の三つの選挙、全てで勝利した「トリプルレッド」を背景とする強力な政権なのです。

　トランプ氏に託された「使命」は、この強さがなければ、おそらく遂行できないと思われる困難な仕事を成し遂げることです。「マルクス主義」との最後の闘いに勝利することです。

　トランプ氏は、「米国の黄金時代が今始まる」「常に、非常にシンプルに米国を第一に考える」と述べ、今日から、この瞬間から米国の衰退は終わり、米国民にとって、2025年1月20日は解放記念日になると、静かにかつ威厳を持って訴えました。

　ここでいう「解放」とはどのような意味なのでしょうか。考えてみましょう。

　トランプ氏は演説で、「われわれは国家を忘れない。憲法を忘れない。そして神を忘れない。決して忘れない」「本日、私は一連の歴史的な大統領令に署名する。これらの行動を通じて、米国の完全な復興と、常識の革命を開始する。全ては常識の問題だ」と述べました。

　鍵になる言葉は「常識」です。「常識の革命」が解放につながるというのです。
　さらに解放とは、文化マルクス主義者（フランクフルト学派）の策動から解放されることを意味します。

　ここで文化マルクス主義について説明します。
　マルクス主義の核心は「共産党宣言」（1848年）に明記されています。人類歴史を階級闘争の歴史であるとし、それ故、あらゆる哲学・思想は党派性を持つものであり、真理性や普遍性で見るべきではないというのです。

　共産主義者は、自己の目的は一切の社会秩序を暴力的に転覆することによってのみ実現できる、と訴えたのです。
　ここでいう「一切の社会秩序」こそ、「常識」とされるものです。それは支配階級のためのイデオロギーだと断罪するのです。
　さらに国家とは、支配階級の利益のための権力機関であるため「悪」であるとし、必然的に愛国心は排除されるのです。

　ドイツ・フランクフルトを拠点としていた「フランクフルト学派」は、ヒトラーの抑圧を受けて米国に亡命。コロンビア大学を拠点に米国の革命に着手したのです。

　彼らは、マルクスの再解釈を試みました。革命の主体を労働者階級に限定せず、西欧文化によって抑圧されてきた人々が、新たな「プロレタリアート」であると、黒人などの人種的被抑圧者、性的少数者、ジェンダーの視点に立つ被抑圧者、その他、西欧に抑圧された民族などを挙げ、常識破壊の文化革命に動員したのです。

　彼らはマルクスの原点に返り、宗教は人間の疎外形態であるとし、全ての人間は「神の似姿」であり「仏性」を宿すというような人間観を否定します。
　宗教は人間を「貧しくする」ものであり、このような人間観が革命への道をふさぐと考えたのです。

　欧米では今、全体主義や共産主義に代わって「権威主義」という概念が批判の中心となっていますが、これもフランクフルト学派の「罠（わな）」です。

　彼らは、キリスト教信仰の典型的家庭において「権威主義的パーソナリティー」が形成されると主張しました。
　権威を受け入れやすく、権威を振りかざす人間になる。すなわち独裁と全体主義の土台となるというのです。
　米国「分断」の元凶は、この「文化マルクス主義」にあったのです。伝統的アメリカの「常識」を否定する革命思想なのです。

　トランプ氏は「常識の革命」を訴えました。今後激しい闘いが展開されるでしょう。
　一時も目をそらすことができないほどの日々が続くことでしょう。
　共産主義との最終決戦です。