2025.01.21 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 350
イグナチオ・デ・ロヨラの霊性⑱
王たるキリストの呼びかけ
ナビゲーター:石丸 志信
イグナチオとイエズス会士を世界宣教の使命に突き動かしたものは何だったのか。
「霊操」の第2段階では、イエス・キリストの誕生に始まり、地上での宣教活動の様子を黙想する。
イエス・キリストの生きて逝かれた全てに注目することで、彼らはイエス・キリストこそが真の王であったと悟るようになる。
そこに一つの鍵がありそうだ。
もともと騎士であったイグナチオが、天上にいますキリストこそ自らが仕えるべき主君だと受け止めても不思議ではない。
この王は、神が立てられた善き王。人類の救済を成就しようという強い意志を持った王。この王たるキリストは、「全世界の人々を一人一人に名指しで呼びかけ、語りかけている」のだ。
イグナチオとその同志らが、強い世界宣教の意志を持って世界に送られていったのは、まさにこの呼びかけに果敢に応えたからに他ならない。
あらゆる人種、民族の中に分け入り、一人一人の魂を救済しようとする王たるキリストの意志を、わが意志としたのだ。
「霊操」における黙想の視点は、次にイエス・キリストの周辺にいた人々に向かう。
彼らがイエスをどのように扱ったのかをつぶさに観察することで、自らの献身の意志が吟味された。
イエスの周りには、己を棄(す)てて従う者、賛美する者、裏切る者、罵(ののし)る者、拒否する者がいた。
さまざまな反応を目の当たりにしながら、「では、私はどのような態度を取るのか?」という問いが自らに突き付けられてくる。
この問いに正面から向き合ってこそ、本当の意味で王であるキリストの呼びかけに応えることができるのだ。
次に永遠の王キリストが征服しようとする敵を見据える。
敵とは、「ルシフェルの旗」の下に、この世に君臨し、数限りない悪魔を呼び集めて、全世界に散らしたその張本人とその配下にある者。彼らは、「人々に網を投げ、鎖をからめて」あらゆる悪徳に引きずり込む。
イグナチオらが世界宣教に乗り出した時、こうした「敵」との戦いを覚悟していた。
柔和、謙遜、清貧、平和のうちに世を治める真の王の到来を準備するために、それに抗する「敵」を打ち破るのだ。
それは、キリストの願う全人類の魂の救済を成就するため、「キリストの王国」を打ち立てるためだった。
それが「より大いなる神の栄光のため」に、彼らがなし得る最高の取り組みであると理解していたのだ。
確かに、イグナチオとザビエル、そして彼らに続く同志らのイエス・キリストに対する限りない愛と献身が世界宣教のみ業を進展させた。
しかしその影で、彼らを本当に動かしてきたものは、霊的真の父母、イエスと聖霊に他ならなかったのだ。
【参照】
●『霊操』イグナチオ・デ・ロヨラ著 門脇佳吉訳・解説 岩波文庫
●『ある巡礼者の物語~イグナチオ・デ・ロヨラ自叙伝』イグナチオ・デ・ロヨラ著 門脇佳吉訳・注解 岩波文庫
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