2025.01.14 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 349
イグナチオ・デ・ロヨラの霊性⑰
イエズス会の霊父、イグナチオ
ナビゲーター:石丸 志信
ザビエルがインドに向けて出発した時、イエズス会はまだ正式な認可を得ていなかった。
そのため、早々に会憲を決定し、総長を選出して会の体裁を整える必要があった。
総長選挙が開かれる前にローマを離れるザビエルは、イエズス会総長には父のごとく敬愛するイグナチオが選出されるべきこと、イグナチオ神父が死去された場合、次代にピエール・ファーブルが就任すべきこと、さらに、選出された総長に「終生の従順、清貧、貞潔」の三つの誓願をささげることを書面に記し、封印して託した。
総長選挙の日が来て、会員は3日間の祈りをささげた後に投票し、イグナチオを除く全員が、彼に票を投じた。
しかしイグナチオは、自らは不適格であるとして辞退と再投票を申し入れたために、さらに3日間の祈りがささげられ、再び投票が行われた。
だが結果は同じだった。
重ねて辞退するイグナチオだったが、最終的にはこれが神のみこころだと受諾した。
この時イグナチオ50歳。その後、64年の生涯を閉じるまで、終生イエズス会総長として会の運営と会員の指導に当たることになった。
10年後の総会で再選された時も辞任を申し出ている。
「多くの罪と多くの不完全と、内的にも外的にも多くの弱さをもっており」(『ある巡礼者の物語~イグナチオ・デ・ロヨラ自叙伝』イグナチオ・デ・ロヨラ著 門脇佳吉訳・注解 岩波文庫、218ページ)、総長としての資格を「ほとんど皆無といっていいほど所有していない」(同)とイグナチオは言う。
彼の謙虚さは、実直な内省の結果であり、常に、「霊操」を実践しながら、神のみこころに委ねる生活をしてきたからだ。
彼はイエズス会の創設者であったが、その会を自分の所有物と考えることは一切なかった。神の立てた器として取り扱い、その器の中で、「より大いなる神の栄光のため」に自らも精進していった。修道会の発展とともに彼の内的世界も成長を続けていったのだった。
「主に仕え始めて以来、…常によりいっそう信心において成長し続けた。信心とは、神をたやすく見出すことを言う。そして、今は全生涯にかつてなかったほど容易に神を見出しうるようになった。神を見出したいと欲するたびにいつもできるようになった。また、今も多くの示現を観る。特に以前に述べたような、太陽のようにキリストを観ることは今もある」(同、208~209ページ)
イグナチオは総長として、世界に派遣した宣教師たちのため、一日に数時間の祈りをささげ、14年間におよそ7,000通の書簡を送った。
自らは世界宣教の最前線に立つ機会はなかったが、ローマに留まりながら、霊父として、祈りを通して三位一体の神の愛を受け取り、その力を全世界に送り届けながら、宣教師一人一人の魂のケアに努めた。
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