2024.12.25 17:00
共産主義の新しいカタチ 44
現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)
動物と同じ次元で人間捉える
ダーウィニズムとその周辺➁
ダーウィンに秋波送るマルクス
しかしダーウィンとマルクス=エンゲルスとの邂逅(かいこう/巡り合い)で、むしろ秋波を送ったのは、マルクス=エンゲルスでした。エンゲルスは『種の起源』が出版されると、読後感をマルクスに手紙を書き送りました。
「いまちょうどダーウィンを読んでいるが、これはなかなかたいしたものだ。『目的論』はこれまである一面にたいしてまだうちこわされていなかったが、これがいまなしとげられた」(大月書店『全集』29巻)
また、W・リープクネヒトの「マルクスの伝記的回想」によれば、「マルクスはダーウィンの研究の重要性を最初に認めた人々のうちの一人であった。…それ(『種の起源』)を世に問うたとき、私たちは何ヶ月ものあいだダーウィンと彼の科学的な成果の革命的な重要性以外には何も話さなかった」と記すほど魅了されたのです。とは言え、ダーウィンとの「接点」をより追求したのはやはりエンゲルスの方でした。
「自然は弁証法の試金石である。そして、近代の自然科学は…自然ではけっきょくすべてが形而上学的ではなく、弁証法的におこなわれているということ、自然は永遠に一様な、たえず繰りかえされる循環運動をしているのではなく、ほんとうの歴史を経過しているのだということを証明した、とわれわれは言わなければならない。この点ではだれよりもさきにダーウィンの名をあげなければならない。彼は、今日の生物界の全体が、植物も動物も、従ってまた人間も、幾百万年にわたっておこなわれた発展過程の産物であるということを証明することによって、形而上学的な自然観に最も強力な打撃を与えたのである」(『全集』19巻)
以上、エンゲルス『空想から科学への社会主義の発展』を引用しながら、小谷汪之・都立大名誉教授は「エンゲルスは長くダーウィンへの関心を持ち続けた。それは、彼が自然(生物界)の進化と人間の社会の歴史とは同一の弁証法によって貫かれているのではないかという見通しを持っていたから」と指摘します(「ダーウィンと唯物論」)。
ダーウィニズムを喧伝したヘッケル
しかしながら1871年、『種の起源』に続く『人間の由来』を書いたダーウィンは、多数の証拠を提示して人間と動物の精神的、肉体的、行動的連続性を示し、ヒトは動物であることを論じ、「人間はその体の中に未だつつましい祖先(動物)の痕跡を残している」と書き、さらに1872年の『人間と動物の感情表現』では、「道徳だけでなく感情も、進化の過程で動物から引き継がれたもの」と論じました。
この観点からダーウィン進化論の「伝道者」となったのが、ドイツの生物学・解剖学者であったエルンスト・ヘッケル(1834〜1919)です。
動物由来の人間への「連続性」について、長らく、雄弁に示す「証拠」とされてきたのが、ヘッケルが1874年に「発生学」の教科書に掲載した「動物の胚の図」です。
しかし実は、現在ではこの「胚の図」がインチキな「想像図」であったことが明らかにされ、生物学の教科書から削除される事態が起きました。実際の生物の発生は下図の表に提示したとおりになります。
ではなぜ、ヘッケルはこのように事実とは異なる「胚の図」を捏造(ねつぞう)したのでしょうか。ヘッケルは「個体発生は系統発生を繰り返す」とし、「胚(胎児)の発生過程は、進化の道筋を示している」と唱えて掲げたのが、生物の発生(初期の胚)を表した図です。ところが、ライプツィヒ大学のW・ヒスという発生学者により、2人の科学者の胚の絵を併せて偽造したものであると暴露されました。
すると、ヘッケル自身も図の「偽造」を認めた上で、「(胚の絵が)あまりに不完全で、つながった発達経路を復元するには、仮説によりギャップを埋め、比較で欠所を再構築するほかない」と言い訳しています。
しかし、この「胚の図」が、「胎児はまだ魚の段階にあるのだから、それは魚を切って出すようなもの」という理屈が、堕胎を是認する者たちに利用されてきたとも言えます。「何百万という無力な、生まれる前の子供たちの殺戮に対する、あるいは少なくとも、それに疑似科学的な根拠を与えたことに対する責任は、この発生反復説というたわごとにある」(ヘンリー・モリス)と非難する学者がいるのです。(続く)
★「思想新聞」2024年12月1日号より★
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