2024.12.22 22:00
ダーウィニズムを超えて 90
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第八章 宇宙の統一原理に向けて
(二)宇宙定数の謎
(3)反重力としての宇宙定数
ブライアン・グリーンは斥力的重力について次のように説明している。
アインシュタインは一般相対性理論を提唱した論文のなかで、重力は質量からだけでなく、熱などのエネルギーからだけでもなく、さまざまな「圧力」からも生じることを数学的に示した。……そして正の圧力は、普通の引力的重力に寄与する。ところが圧力は、質量やエネルギーとは異なり、ある領域の内部で負になりうる。……正の圧力は、普通の引力的重力に寄与するのに対し、負の圧力は「負」の重力、すなわち《斥力的重力》に寄与するのである(*16)。
アインシュタインにとって、これは願ってもないことだった。新たに見いだされた斥力的重力によって、静的な宇宙を作り出せると考えたのであった。かくして宇宙には引力的重力と斥力的重力を生じせしめる場があることが示された。そしてそれは真空エネルギーが正であれば宇宙は加速度的な膨張になり、真空エネルギーが負になれば、宇宙は収縮に向かうことを意味するのである。アレックス・ビレンケンは正と負の宇宙定数の効果について次のように説明している。
[真空エネルギーが正、すなわち正の宇宙定数の場合]、宇宙が膨張するにつれて、物質の密度は薄まります。……物質は銀河をつくるのではなく、反発力として働く真空の重力によってまばらになっていくのです。……負の宇宙定数の影響はもっと壊滅的です。この場合は、真空の重力は引力として働きますから、真空の重力が優勢な領域は、急激な収縮と崩壊が起こります(*17)。
そして1998年の超新星の測定から、宇宙の膨張は、始まって以来加速し続けていることがはっきりした。そして、これは、真空エネルギーは正であることを示唆していた。ニール・トゥロックが言うように、正の真空エネルギーが発見されたことは、宇宙の構成を明らかにするうえで鍵となる重要な一歩であった(*18)。
*16 ブライアン・グリーン、青木薫訳『宇宙を織りなすもの・下』三陽社、2009年、53~54頁。
*17 アレックス・ビレンケン、村田陽子訳『多世界宇宙の探検』日経BP社、2007年、233頁。
*18 ニール・トゥロック、村田三知世訳『ここまでわかった宇宙の謎』日経BP社、2015年、171頁。
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次回は、「臨界密度にぴたりと一致する宇宙」をお届けします。