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ほぼ5分で読める勝共理論 60
天皇について⑧
天皇は象徴か、国家元首か

編集部編

日本の国家元首は誰か?
 前回、天皇の象徴としての立場についてお話ししました。
 そして前回の最後に少しお話ししたように、「天皇は象徴ではない方がいい、国家元首にすべきだ」という見解もあります。

 確かに「象徴」という言葉はよく分かりません。少なくとも外国人にはよく分からないでしょう。それよりは、「国家元首」というはっきりとした立場にするべきだというわけです。

 国家元首というのは、その国の代表者のことです。
 例えばイギリスの国家元首はエリザベス女王です。政治権力とは別に、イギリスという国の代表者は女王なのです。国賓が来れば、女王が国家元首としてあいさつします。外国の大使が就任すると、エリザベス女王にあいさつに行きます。

 では王室がない国ではどうなるかというと、アメリカの場合は大統領が国家元首です。王室がない国では基本的に大統領が国家元首になります。

 ちなみに、G7という世界の主要国家の会議では、写真撮影の時の並ぶ順番が決まっています。
 まず、国家元首かそうでないかによって場所が変わります。あとは就任して何年目かによって変わります。

 以前テレビ番組で、日本の総理大臣が写真の端の方に写っていて、「なめられているのではないか」という話をしていました。実際は単に任期が短かったからなのです。

 日本の場合は、国家元首が誰かはっきりしていません。
 外国の例を考えると、天皇のような気がします。そして実際に、国際社会ではほとんどの国が日本の国家元首は天皇であると考えています。

 だからトランプ大統領も天皇・皇后両陛下にあいさつに来ました。大使が就任する時もあいさつに来ます。もちろん前ケネディ駐日大使も就任する時と離任する時に、当時の天皇・皇后両陛下にあいさつに来ました。

天皇は国家元首でもあり、象徴でもある?
 日本でも憲法を改正して、「天皇は国家元首」というはっきりとした立場にしようではないかという話があります。

 例えば、自民党が発表した憲法改正草案では、第一条は次のようになっています。

 第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。

 筆者もこの考えには一理あると思っていますが、今のままでもいいのではないかとも思っています。
 その理由は、天皇の祭司という立場は国家元首という言葉では表現しきれないからです。

 確かに日本の天皇は、これまで見てきたように諸外国にはない存在です。王室のある国はありますが、天皇は王ではありません。
 外国のお客さまを迎える仕事を憲法上の仕事としていますが、それが天皇本来の仕事だとも思いません。

 天皇は、国民と共に生きて、国家と国民のために祈る存在です。これをぴったりと表す言葉は他にありません。やはり天皇は象徴です。

 そして先ほど話したように、大統領と国家元首を兼ねるという国もあります。
 もし天皇が国家元首になると、その人たちと同じ地位になります。写真を撮れば同列になります。

 ですが、筆者は天皇とアメリカの大統領が同列の人物だとは思いません。一方は祭司、一方は政治家ですから、全く違う存在です。
 ですから天皇は国家元首ではなく、象徴のままでいいのではないかと思っています。

 この考えが合っているのかどうかは分かりません。それぐらい象徴天皇制というのは難しい概念だということです。

 ちなみに上皇陛下も、退位のお気持ちを発表された時に、象徴天皇としての在るべき姿を模索しながら過ごしてきたと語られました。それぐらい難しい概念だということです。

 次回は天皇シリーズの最後になりますが、この上皇陛下のお言葉を紹介して終わりにしたいと思います。

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