2024.12.17 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 346
イグナチオ・デ・ロヨラの霊性⑭
世界宣教への道
ナビゲーター:石丸 志信
1534年8月15日、イグナチオと6人の同志が新たな使命に燃えて集まった。
いわゆる「モンマルトルの誓い」の翌年、学業を終えたイグナチオは、一時故郷スペインに戻る。
その時の様子は、エルサレムに向かった巡礼者の姿のままだった。
「放浪の説教者」を経て、世界宣教を旨とするキリストの霊的軍団を率いる司令官として再出発する前の身辺整理のためだった。
会衆の面前で若き日の小さな過ちを告白し、許しを請うた。
町々を回って説教し、子供たちに信仰教育を施した。
人々の悪弊を改めさせ、貧しい者たちへの施しを行った。
また、若き同志らの故郷を訪ねて、その親族らへの配慮を怠らなかった。
「預言者は、自分の郷里では歓迎されないものである」(ルカによる福音書 第4章24節)とイエスは言われたが、イグナチオは故郷で多くの人々に回心と感動を呼び起こした。
もっとも、彼がパリに出る前には、さんざん異端の嫌疑をかけられ、宗教裁判で裁かれ、投獄までされ、死刑宣告を受けながら寸でのところで許され釈放された。
多くの迫害と誹謗(ひぼう)中傷を受け、死の峠を越えて、イエス・キリストの歩まれた道に即して歩むようになった。
エイブラハム・リンカーンはアメリカ合衆国大統領に選出され、首都への旅立ちの時、次のような言葉を残している。
「今私はこの土地を去ります。いつ帰れるか、果たして再び帰れるか、わかりません。ワシントンに委(まか)された事業よりも、もっと困難な事業を前にして行くのです」(スプリングフィールドを去ってワシントンに向う別れの挨拶~『リンカーン演説集』高木八尺・斎藤光訳 岩波書店、92ページ)
住み慣れた土地の人々に送った別れのあいさつだ。
イグナチオも同じような心境でこの期間を過ごしたのだろう。
短期間の故郷行脚で、イエス・キリストに倣って愛を投入し、ふるさとへの未練を残さぬようにした。彼もまた、再び故郷に帰れるとは思わなかった。
イエス・キリストが使徒パウロに託した事業を、再臨の時が一層近づく時代にイグナチオは託されたからだ。
彼は、使徒パウロの時よりも拡大された版図であるが故に、より困難な「世界宣教」という大事業の扉に手をかけていたのだ。
イグナチオと同志らは、1000年以上にわたる修道者の歴史を短期間で通過し相続した立場で、新たな修道霊性の伝統を生み出していく。
世界宣教を旨として、あらゆる人種、言語、文化にも恐れず入っていく宣教師を世界に輩出していくことになる。
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