2024.12.04 17:00
共産主義の新しいカタチ 41
現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)
農業版文革を露わにしたルイセンコ事件
ラマルク進化説と共産主義①
遺伝子決定論と文化決定論との論争
今日のLGBTなどジェンダー論では遺伝的な議論が極力排除される傾向にあります。一般的に現代の人類学ではDNA解析がほとんどですが、20世紀前半の文化人類学は、ある意味ジェンダー論の奔(はし)りとも言えます(M・ミード『サモアの思春期』など)。
遺伝的要素よりも後天的要素、つまり「氏より育ち」を重視したのです。これは生物学の進化説で言えばラマルキズムとダーウィニズムの対立とも言えるものでした(特にダーウィンの従弟ゴールトンの優生学)。
ダーウィンの『種の起源』(1859年)のちょうど半世紀前にジャン=バティスト・ラマルク(1744〜1829)の主著『動物哲学』が著されました。ラマルクは「生物学」という学術用語を初めて用いた生物学者で、彼の進化説も独特のものでした。
ラマルクの説く進化説は、①生物がよく使用する器官は発達し、使わない器官は退化するという「用不用説」と、②個々の個体が得た形質(獲得形質)がその子孫に遺伝するという「獲得形質の遺伝」を2本柱とするものでした。またラマルクは生物の進化は、その生物の求める方向へ進むもの(定向進化)と考え、生物の「主体的な進化」を認めたものです。
このため、厳密な意味でラマルクは遺伝について否定したわけではありませんが、今日のダーウィニズムは、G・メンデルの「遺伝の法則」やド・フリースらの「突然変異」の発見によって補強され、「ネオ・ダーウィニズム」と呼ばれるようになりました。そしてさらに、DNAの発見でより遺伝学の精度が高まったのです。
また、優生学をはじめとする遺伝決定論者が全面的にダーウィニズム(自然淘汰=適者生存説)を採用し、ラマルキズムの「獲得形質・用不用説」を退け、逆に文化人類学をはじめとする文化決定論者がラマルキズムに近づいていったと言えます。
それは、遺伝決定論者のアウグスト・ヴァイスマンが、ネズミの尾を切っても、それが子に遺伝しないことを実験で証明し、「ラマルキズムの獲得形質は遺伝しない」と「進化論におけるラマルキズムの敗北」を宣言し、それはもはや雌雄を決したと見なされたからです。ただ、ヴァイスマンの実験は、ネズミが望んでしっぽを失ったわけではなく、生物の主体性重視の用不用説への完全な反証とは言えませんでした。
しかし、このラマルクの進化論の拙劣さは、別の形で露わにされ、20世紀の共産主義を標榜したソ連=スターリン体制下において大失敗を引き起こすことになります。それがいわゆる「ルイセンコ事件」です。(続く)
★「思想新聞」2024年11月15日号より★
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