2024.11.19 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 342
イグナチオ・デ・ロヨラの霊性⑩
聖地への巡礼を歩み始めたイグナチオ
ナビゲーター:石丸 志信
聖地への巡礼を歩み始めたイグナチオは、1523年の初めにバルセロナをたち、地中海を渡り、イタリアのカエタ、ローマ、ヴェネチアからキプロス島を経てエルサレムに到着した。
旅の途上、いくつかの困難に遭遇したが、それを切り抜けて目的地に到達することができた。
それは、ひとえに神の特別な計らいに他ならないと捉えた。
イグナチオは、「この時期ずっと、われらの主がしばしばかれに顕れた。主はかれに大きな慰めと力とを与えてくださった」と自叙伝(『ある巡礼者の物語~イグナチオ・デ・ロヨラ自叙伝』イグナチオ・デ・ロヨラ著 門脇佳吉訳・注釈 岩波書店、104ページ)に記している。
深い慰めを感じながら歓喜のうちに聖なる都へと入るイグナチオを迎えたのは、13世紀以降聖地を守るフランシスコ会の修道士たちだった。
エルサレム旧市街の一角には、イエスが十字架を担ってゴルゴタの丘に向かって歩いた「悲しみの道(ヴィア・ドロローサ)」がある。
その隅々に、イエスの流した血の御跡(みあと)がある。
巡礼者は必ず、その道をたどりながら独り子の苦難を思い起こす。
この場に立ったイグナチオの感慨はいかばかりであっただろうか。
「目覚めなさい、キリストを愛する霊魂よ。目覚めなさい、キリストを信じるすべての霊魂よ。イエス・キリストについて語られている一つ一つについて熱心に尋ね、深く思い、心で触れ、あなたの主の跡に倣いなさい。主はあなたのために天上から地上へ降った」(『キリスト伝』ルードルフ・フォン・ザクセン著 鈴木宣明訳『宗教改革著作集 第十三巻 カトリック改革』澤田昭夫監修 教文館、50ページ)
闘病中にロヨラ城で手にした『キリスト伝』の一節が、聖地に立つ彼を突き動かしたに違いない。
憧れの聖地で、イエス・キリストが歩まれた場所をつぶさに見、その空気を肌で感じ、祈りながら主の受けた痛みをも実感しようと務めた。
イグナチオは、イエス・キリストの一挙手一投足を知りたかった。
神の独り子は、確かに肉体を持ってこの地上に来られ、この地で生きて語られ、癒やしの業をなされ、人々から捨てられ、十字架に架けられ殺された。
しかしながらそのかたは、天の父の御手(みて)によってこの地で復活され天に上げられたのだ。
現場をつぶさに見ながら、これまで教えられ信じてきたイエス・キリストの生涯を確かめることができた。
イグナチオは、このエルサレム巡礼を通して、「まことに、この人は神の子であった」(マタイによる福音書 第27章54節)と叫んだ兵士のごとく、全世界に向かって主を証しする使命を自らに託されたと受け取った。
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