2024.11.03 22:00
ダーウィニズムを超えて 83
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第七章 混迷する神なき現代物理学
(八)物理学の行くべき道
(8)神の実在
ダーウィニズムが崩壊して目的論が復活すれば、目的を立てたのは誰かということで創造目的を立てた神を認めざるをえなくなる。またデザインを認めれば、デザイナーとしての神を認めざるをえなくなるのである。
無神論者のワインバーグは、ガウス(Gauss)やリーマン(Riemann)によって創られた非ユークリッド幾何学が、のちにアインシュタインによって相対性理論の構築に用いられたことに対して、「数学はアインシュタインが利用するのを待っていた(*56)」と言う。またガロア(Galois)、リー(Lie)、カルタン(Cartan)がつくった群論がやがてゲルマンのクォーク理論の構築に用いられた。ノーベル物理学受賞者のユージン・ウィグナー(Eugene Wigner, 1902~95)はこのような現象を「理屈では説明できない数学の有効性」と呼んだ。そしてワインバーグは「物理学者の理論で必要になる数学を予想する数学者の能力を、一般の物理学者[ワインバーグを含む]は全く神秘的なものと見る(*57)」と言う。
このような歴史的な事実のなかに、まず数学者にひらめきを与えて新しい数学を構築させ、やがて物理学者にその数学を用いて物理法則を発見させている、神の摂理を見ることができよう。すなわち、神は宗教指導者を通じて人類を導いているのみならず、科学者を通じて——彼らが神を認めるか、認めないかにかかわらず——歴史を導いているのである。つまり無神論的な科学者たちも、我知らず神の摂理に貢献してきたのである。
ドーキンスは『神は妄想である』という本を著し、神への敵意を露わにした。しかし本書の第3章「統一思想から見たドーキンスの進化論」において述べたように、ドーキンスは神を否定しながらも、唯物論的な立場から、神の創造の軌跡を追っていたと言えるのである。
ワインバーグは、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の発進に向けた記事の中で「宗教の出番はますます少なくなる(*58)」と述べた。しかしワインバーグも、上述のように、歴史の背後に科学者を導いている神秘的な力を認めざるをえないのである。
神による天地創造に対しては「死ぬまで抵抗する」と言うサスキンドであるが、宇宙のランドスケープは設計図のようなものであると言う。それは宇宙は設計図によって造られたことを認めたのと同然である。
「創造主の出番はどこにあるのだろう?」と言って、宇宙から神を締め出してしまったホーキングであるが、虚時間の世界が実時間の歴史を決定すると言い、霊界を認めるような方向に向かっているのである。
ブライアン・グリーンは、そのような科学者の歩みを「人間の梯子(はしご)」と言って説明している。すなわち科学者は歴史を通じて、バトンタッチをするようにして、梯子を一歩一歩登りながら頂上を目指して山を登ってきたのである。
私たちはすべて、おのおのの仕方で真理を探し、おのおの、なぜ私たちはここにいるのかという問いに答えを望む。人類が説明の山をよじ登るとき、おのおのの世代は、前の世代の肩の上にしっかり立って、勇敢に頂上を目指す。……そして、私たちの世代が新たな宇宙観——世界の一貫性を表現する新たな仕方——に驚嘆するとき、私たちは星々に向かって延びる人間の梯子に横木を付け加えて、自分の役割を果たしているのだ(*59)。(太字は引用者)
ブライアン・グリーンは結論として次のように述べる。
私たちは、いつの日か、そのような研究から科学的説明には本当に限界があると納得するかもしれない。しかし、逆に、そのような研究が新たな時代——宇宙の根本的な説明がついに見つかったと宣言することができる時代——を拓くということもありうる(*60)。(太字は引用者)
宇宙の根本的な説明がついに見つかったと宣言することができる時代が間もなくやってこようとしている。それは科学者が神を再発見し、神の栄光とみ手のわざを賛美するようになる時である。
*56 スティーヴン・ワインバーグ、小尾信弥・加藤正昭訳『究極理論への夢』ダイヤモンド社、1994年、173頁。
*57 同上、176頁。
*58 NEWSWEEK,2008.9.15
*59 ブライアン・グリーン、林一・林大訳『エレガントな宇宙』草思社、2001年、513~514頁。
*60 同上、511頁。
---
次回は、「宇宙の統一原理に向けて」をお届けします。