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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

イラン、イスラエルに約200発のミサイル攻撃

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、930日から106日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 イスラエル、レバノンに対する地上攻撃開始(101日)。イラン、イスラエルにミサイル攻撃(1日)。米副大統領候補が討論会、激しい応酬(2日)。ローマ教皇の中絶反対発言に抗議、ベルギー(3日)。北朝鮮、攻撃受ければ核使用ためらわずと朝鮮中央通信(4日)。イーロン・マスク氏、トランプ氏の集会に初参加、ペンシルベニア州(5日)、などです。

 イランは、現地時間101日午後730分ごろ、200発近い弾道ミサイルをイスラエルに撃ち込みました。
 約1000万人のイスラエル市民は防空壕(ごう)に逃げ込みました。イスラエルの防空システムが作動したほか、アメリカやイギリスなどの同盟国も迎撃に加わっています。

 イスラエル国防軍(IDF)は、ミサイルの大半は迎撃されたが少数のミサイルはイスラエル中部と南部に着弾したと発表しました。
 これまでに死亡が報告されているのは、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区のパレスチナ人男性1人です。

 イスラエルに対するイランの直接攻撃は、今年4月に続き2回目となります。
 イランが4月にイスラエルを攻撃した際には、100発以上の中距離弾道ミサイル、30発以上の巡航ミサイル、150機以上の攻撃型ドローンなど、合計で300以上を発射しています。

 背景にあるのは、イスラム原理主義組織ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ氏が7月に首都テヘランで殺害されたこと、さらに9月には、イスラエルのレバノン空爆でヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師と、革命防衛隊の軍事顧問アッバス・ニルフルシャン准将が殺害されたことがあります。報復です。

 ただしすぐには行動せず、パレスチナ自治区ガザの戦闘を巡る停戦交渉を見守っていたとみられます。
 停戦交渉が進まない中、1日にはイスラエルのレバノン地上侵攻が行われたことが、イランの報復攻撃の最終的な引き金になったとみられます。

 そして4月の攻撃の際には、イランは国交のない米国にスイスを通じて攻撃を事前に伝えていたのですが、今回は、米国への事前の警告はありませんでした。
 米情報機関が独自に攻撃の兆候をつかんでいましたが、この点からすると、イラン側の姿勢はより強硬になったといえるでしょう。

 しかし攻撃対象は軍事施設などに限定されています。さらにイラン外務省の1日の声明で、「長い自制の末の選択だ。イスラエルと異なり、イランは軍事・安保施設のみを標的とした」と主張。イスラエル側が報復攻撃をしなければ、イラン側の攻撃はこれで終わる、とも説明しており、イランとしては、事態をエスカレーションさせたくない、との意向もにじませています。

 一連の事態が米大統領選挙に影響を与えることは確実です。
 米共和党大統領候補のトランプ前大統領は、世界は自分の任期中は平和だったと常に主張してきました。
 バイデン政権の「弱さ」が欧州や中東での戦争勃発につながったと非難してきたのです。中東地域の緊張の高まりは、完璧なまでにトランプ氏の主張に合致しています。

 米国では大統領選のたびに、投票まであと数週間という10月の段階で選挙戦を覆すような「オクトーバーサプライズ」が起こるかもしれないという「憶測」が飛び交います。
 イスラエルとイランがまさに今回の米大統領選におけるオクトーバーサプライズをもたらすといえそうなのです。

 トランプ氏がその恩恵を受けることになるかもしれません。



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