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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

自民党・石破茂新総裁誕生、内外の混乱は必至

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、923日から29日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 イスラエルのレバノン空爆(ヒズボラに対する攻撃)で274人が死亡(9月23日)。中国が軍事演習でICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射し太平洋に落下、模擬弾搭載(25日)。海自護衛艦の海峡通過に中国が抗議、台湾は静観か(25日)。就役前の中国原潜が沈没か、米ウォール・ストリート・ジャーナル報道(26日)。自由民主党総裁選で石破茂氏が勝利(27日)、などです。

 自民党総裁選の第1回投票では高市早苗氏が議員票72、党員票109、計181票でトップでした。しかし過半数には届かず2位だった石破茂氏との決選投票となり、大逆転で石破氏が勝利したのです。

 決選投票では石破氏が議員票189、都道府県票26で計215票。高市氏は議員票173、都道府県票21で計194票となり、21票の僅差でした。

 石破氏は第1回投票では議員票はわずか46、党員票は108で計154票でした。
 決選投票では議員票においてとんでもない伸びを示したことになります。143票も増えたのです。

 その原因は小泉氏の議員票75、林氏の38、上川氏の23などが石破氏に回ったことにあります。
 そのようにした力は菅義偉氏(小泉陣営)や岸田文雄氏(林、上川陣営)の「働きかけ」にあるのです。

 高市氏は極端な「右」であり、外交的に危険。連立を組んでいる公明党との関係が難しくなる、などの懸念を訴えて議員票を動かしたとみられています。

 内外の混乱は必至です。それは石破氏がこれまで主張してきた「政策」提言で明らかなのです。
 いくつか挙げてみましょう。

 女系天皇の容認、選択的夫婦別姓制度の導入、アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設、日米地位協定の改定、米国内に自衛隊の訓練基地を設置、東京と平壌に連絡事務所を開設し拉致問題解決のための足がかりとする、防災省の設置などなどです。

 米国からは懸念の声が既に上がっています。
 まず「アジア版NATO」発足の主張ですが、NATO加盟国は皆、軍隊を保有しています。日本の自衛隊は軍隊ではありません。憲法9条には陸海空の戦力は保持しない、とあるからです。

 自衛隊は軍隊ではなく「実力組織」なのです。よって日本は、「加盟国の義務」である集団的自衛権の全面的行使を行える状態にはないのです。日本は集団的自衛権の全面的な行使を憲法違反としているのです。

 また、米国に自衛隊の訓練基地を設置するという構想の実現には、自衛隊の海外派兵を認める必要がありますが、現行憲法下では容認されていません。

 さらに、在日米軍は有事の際、命懸けで日本を守るのに、米国に置く自衛隊基地が訓練目的であれば米国を守れず、この点から見ても、「対等」であることはできないのです。

 「政治家は評論家ではない」と安倍晋三氏はよく語っていました。
 石破氏の掲げる政策は「良さそうに見えるけれども実効性がない」ものが多いのです。

 石破総裁の考えには、日本の歴史、文化、伝統が破壊され、日米同盟関係にひびが入りかねない深刻な内容を秘めていることをお伝えしておきたいと思います。



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