世界はどこに向かうのか 320
トランプ陣営、選挙戦移動用に軍用機の使用を要請

2024.10.15 17:00

世界はどこに向かうのか
～情報分析者の視点～

トランプ陣営、選挙戦移動用に軍用機の使用を要請

渡邊芳雄（国際平和研究所所長）

　今回は、10月7日から13日までを振り返ります。

　この間、以下のような出来事がありました。

　北朝鮮、最高人民会議で改憲討議、韓国を「敵」と明記へ（10月7日）。イスラエル軍、レバノンで侵攻拡大（8日）。ヒズボラ後継者殺害、イスラエル表明（8日）。台湾・頼総統双十節での演説で「中華人民共和国に台湾を代表する権利はない」と演説（10日）。韓国の作家・韓江（ハン・ガン）さんがノーベル文学賞、アジア人女性で初の受賞（10日）。韓国・尹錫悦（ユン・ソンニョル）大統領、東アジアサミットで日本人拉致問題などに言及（11日）。トランプ陣営が選挙戦移動用に軍用機の使用を要請と、メディア報道（11日）。イスラエルのネタニヤフ首相、国連レバノン暫定軍の戦闘地域撤退を求める（13日）。台湾、南方で中国空母「遼寧」を確認、警戒を継続（13日）、などです。

　トランプ前大統領の陣営が、トランプ氏の選挙戦移動のために米軍用機や軍用車両などの使用を求めたと、10月11日、ワシントン・ポストが報じました。

　背景にあるのは、米情報機関がイランによるトランプ氏の暗殺計画があると分析していることがあります。
　大きな懸念は、無人機やミサイルによる攻撃を受けることであり、大統領選最終盤での活動に向けた警護強化を図る狙いがあるのです。

　トランプ氏はこれまで、私用のジェット機で移動していました。もちろんハリス氏は軍運用の専用機を利用しています。
　トランプ陣営からの要請に対してバイデン大統領は、「彼が必要とするあらゆるものを与えるよう指示した」と述べています。

　トランプ政権下の2020年1月3日にイランの革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」の司令官（ソレイマニ）が米軍によって殺害されたことへの報復として、トランプ氏を狙っている可能性があると米情報機関は指摘しています。

　9月24日、イランによる暗殺計画についてトランプ陣営はすでに声明を公表しています。
　トランプ氏は同日、イランによるトランプ氏暗殺の脅威について米政府の国家情報長官室から報告を受けたことを明らかにしました。

　公表された声明の内容は、イランの狙いが「米国を不安定化させ、混乱を巻き起こす取り組みの一環」であり、米情報当局は「継続的で組織的な動きがここ数カ月間、強まっている」と分析しているというものです。

　さらに米メディアは7月、米政府がイランによる暗殺計画に関する情報を察知し、トランプ氏周辺の警備を強化したと報じていたのです。

　極めて根の深い深刻な事態が進行している可能性があります。
　トランプ前政権はイラン政府に対して強い姿勢で対応し、完全に抑え込んでいました。イランはトランプ氏の再来を何としても阻止したいのでしょう。

　しかしこの計画と、7月ペンシルベニア州、9月フロリダ州で起きた暗殺未遂事件とは無関係とみられています。

　徐々にではありますが、トランプ氏に対する支持、期待が高まってきています。
　米国の世論調査会社「リアル・クリア・ポリティクス」が公表した支持率、特に勝敗を決めるといわれる激戦7州の状況は以下のごとくです。

　10月4日現在、ネバダ州はトランプ支持が47.5、ハリス支持48.6。アリゾナ州はトランプ48.9、ハリス47.5。ウィスコンシン州はトランプ48.2、ハリス49.0。ミシガン州トランプ47.6、ハリス48.3。ペンシルベニア州トランプ48.2、ハリス48.2。ノースカロライナ州トランプ49.0、ハリス48.4。ジョージア州トランプ49.3、ハリス47.8でした。

　トランプ氏の優勢は、アリゾナ、ノースカロライナ、ジョージアの3州でしたが、10月14日時点の調査では、ネバダ州はトランプ＋0.2（プラスが優勢）、アリゾナ州はトランプ＋1.0、ウィスコンシン州はハリス＋0.3、ミシガン州はトランプ＋0.9、ペンシルベニア州はトランプ＋0.1、ノースカロライナ州はトランプ＋0.5、ジョージア州はトランプ＋0.5、となり、ウィスコンシン州以外は全てトランプ有利となっています。

　最後の最後まで何が起こるか分かりません。命を懸ける政治家の闘いを直視しましょう。