2024.09.22 22:00
ダーウィニズムを超えて 77
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第七章 混迷する神なき現代物理学
(八)物理学の行くべき道
現代物理学は大きく二つの方向に向かっている。一つは唯一の物理法則である万物理論を追求する一群であり、他の一つは、あらゆる宇宙定数とあらゆる物理法則をもつ、膨大な数の宇宙があると主張する人間原理(弱い人間原理)に向かう一群である。
唯一の物理法則派に対しては、人間原理のほうから次のような辛辣(しんらつ)な批判がなされている。サスキンドは「ひも理論家は唯一性の神話に目がくらんでいる(*42)」、「物理学の分野は、いつ降参すべきかわきまえなかった頑固な老人たちの死屍累々(ししるいるい)である(*43)」と言い、ポルチンスキーは「ストリング理論には、一真空教信仰があり……何かの魔法で単独の真空、つまりわれわれの真空を選ぶのだろう(*44)」と言う。
人間原理に対しては、唯一の万物理論のほうからは、やはり辛辣な批判がなされている。グロスは人間原理にたいして、「問題が解けない理由を説明するためにひねり出す大原理」であり、ウイルスであって、多くの物理学者がこれに感染し、その病から回復する兆しが見えないと嘆く。プリンストン大学の宇宙論学者のポール・スタインハート(Paul Steinhardt)は、人間原理に対して、「自暴自棄の振る舞い」、「検証できない非科学的理論」、「人間原理騒動は至福千年の狂騒」と言う(*45)。
唯一の物理法則派も人間原理派もいずれも隘路(あいろ)に迷いこんでいると言わざるをえない。それではこのような隘路から脱する道は何であろうか。
(1)ダーウィニズムの再考
現代物理学がこのような隘路に迷い込んだ原因は、現代科学が目的論を排除したことにあり、その元凶はダーウィニズムにある。したがってダーウィニズムが誤りであることが明らかになれば、自然科学は目的論を排除すべきだという前提が崩れざるをえない。ダーウィニズムは誤りであること、そしてダーウィニズムに代わる、科学時代の今日にふさわしい、新しい創造論を本書において紹介した。物理学者は、目的論をタブー視する頑迷(がんめい)な態度を改めるべきである。
*42 レオナルド・サスキンド、林田陽子訳『宇宙のランドスケープ』日経BP社、2006年、333頁。
*43 同上、472頁。
*44 ピーター・ウォイト、松浦俊輔訳『ストリング理論は科学か』青土社、2007年、313頁。
*45 同上、318頁。
---
次回は、「目的論の復権」をお届けします。