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ダーウィニズムを超えて 76

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第七章 混迷する神なき現代物理学

(七)神と物理学

 ドーキンスが「無神論はダーウィン以前でも論理的には成立したかもしれないが、ダーウィンによって初めて、知的な意味で首尾一貫した無神論者になることが可能になった(*39)」と言っているように、ダーウィニズムの登場によって、生物学のみならず、自然科学のすべての領域に無神論が広がっていった。そして今日、目的論を排除し、神を排除することが科学的な態度であると見なされるようになったのである。しかしダーウィニズムが誤りであるとすれば、現代の無神論的物理学もその支柱を失うことになる。そしてダーウィニズムに代わる、科学時代にふさわしい新しい創造論が提示されれば、物理学においても、目的論の復権、神の復権がなされることであろう。

 ここでダーウィン以前の科学者の神観はどうであったのか、振り返ってみよう。ルネサンス時代の大科学者であるコペルニクス、ケプラー、ガリレオ、ニュートン等は、みな深い信仰をもっていた。コペルニクスは重力を「創造者の英知」によるものと見なした。ケプラーは天文学を通じて神のみわざをもっと深く理解できると考え、「創造とその偉大さを明瞭に認識するほど、敬意はさらに深まる(*40)」と書いている。この時代の人々の信仰には「もろもろの天は神の栄光をあらわし、大空はみ手のわざを示す」(詩篇191)という聖句の響きが感じられたのである。ニュートンは科学者であると同時に神学者でもあった。彼は自分の科学が自分の神学のように、創造主の栄光を高めることを疑っていなかった。

 ダーウィニズムに影響を受けなかったアインシュタインは、「神様がどのようにしてこの世界を創造したかを、私は知りたい。これやあの現象、これやあの元素のスペクトルには興味がない。神の御心が知りたい。それ以外はどうでもいいことだ」と言って、神がいかにしてこの世界を創造したのかを研究のモットーとしていた。彼はまた、「私が本当に興味をもっているのは、宇宙を創造するにあたって、神には、この宇宙ではなく、別の宇宙を創るという選択の余地があったかどうかである」と言いながら、神には選択の余地なく、この宇宙を創造されたと主張した。そして彼は「宗教のない科学はかたわであり、科学のない宗教は盲目である」という有名な言葉を残したのであった。

 しかし、20世紀の後半に至り、ダーウィニズムは猛烈な勢いで科学者の心をとらえた。そして今日、自然科学の領域において、目的論は完全に否定され、神は完全に排除されたかのような状況を呈している。しかし、すでに述べたように、ダーウィニズムの誤りが明らかになれば、無神論の嵐も過ぎ去らざるをえない。そうすれば晴れあがった世界に神の姿が再び現れてくるであろう。そして神の栄光とそのみわざを明らかにしたいと願った、ルネサンス期の科学者たちの夢、アインシュタインの夢が実現するようになるであろう。

 宗教によって科学の発展が阻害されると考える人たちがいる。しかし、それは誤った考えである。歴史上、宗教指導者が、誤った、独善的な思想でもって科学の発展を阻害したことはあった。しかし、それは彼らの信仰観の誤りであり、宗教そのものが誤っていたのではない。

 宗教は数学の公式に干渉するものではなく、自然法則に干渉するものではない。科学者は今までどおり、自由に研究を進めてゆけばよいのである。しかし、「宗教のない科学は盲目である」とアインシュタインが述べたように、宗教を否定する科学は方向感覚を失い、ランダムな無数に存在する世界に迷い込まざるをえないのである。

 宗教は科学に方向性とひらめきを与えるものである。今日まで、科学の発達において、霊的なインスピレーションが重要な役割を果たしたことに疑いの余地はない。今日の物理学者たちは、『神のつくった究極の素粒子』を書いたレオン・レーダーマンの次のような言葉に耳を傾けるべきであろう。

 もしも新しい物理学を東洋の神秘主義になぞらえる著述家たちの語る宗教的メタファーが、現代の物理学の革命を理解する上で多少とも役立つのなら、ぜひともそれを利用することだ(*41)。


*39 リチャード・ドーキンス、日高敏隆監訳、中嶋康裕他三人訳『盲目の時計職人』早川書房、2004年、26頁。
*40 ダン・フォーク、松浦俊輔訳『万物理論への道』青土社、2005年、247頁。
*41 レオン・レーダーマン、高橋健次訳『神がつくった究極の素粒子』草思社、1997年、上巻、322

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 次回は、「物理学の行くべき道」をお届けします。


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