2024.08.27 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 330
修道院の祈り㉘
中世は暗黒時代か?
ナビゲーター:石丸 志信
修道院は、4世紀の古代キリスト教世界に生まれたキリスト教生活の一形態である。
修道院の生活は、祈りと労働を基軸とした共同体生活が基本だった。
祈りは、個々人の沈黙の祈りや共同体の声を合わせた祈りなどさまざまな取り組みがあった。
労働は、地を耕すことから聖書の探求まで、内外の営みが含まれた。
中世は暗黒時代だといわれることもあるが、およそ1000年に及ぶ中世キリスト教世界は決して暗闇に覆われた時代ではない。
そのような言説は、近世が無知蒙昧(もうまい)を啓(ひら)き、人々が教会の支配から解放された明るい時代だという見方から来ている。
中世は、西ローマ帝国崩壊後、ゲルマン民族がキリスト教信仰を受け入れ、一つの「ヨーロッパ」を創出し発展させていく時代である。
その原動力となり、キリスト教文化の第一の担い手となったのが修道院であった。また、祈りに導かれた共同体は、時代の変化に伴い、絶えず刷新を繰り返しながら、生きた信仰の伝統をつないできた。
修道院がそのような役割を担えたのは、いつの時代の修道者たちも、「神を探し求めること、ただ神のみを探し求めること」(『修道院』朝倉文市著 講談社 1995年)を追求してきたからだ。
神の御前(みまえ)に額(ぬか)ずき、頭(こうべ)を垂れて、祈りの精誠をささげてきた修道者に神は常に寄り添い、イエス・キリストと聖霊が導いてきたともいえる。
とはいえ、16世紀初頭には、キリスト教世界自体が大きな変革期を迎える。
中世の統合された価値観が次第に崩壊していく中で、新たな改革の機運が湧き起こってくる。
宗教改革の烽火(のろし)も、修道院の中から上がった。
1517年にヴィッテンベルクの城の教会に『95カ条の論題』を張り出し、プロテスタント運動の端を開いたマルティン・ルターは、聖アウグスチノ修道会の修道士で神学教授でもあった。
宗教改革は、彼自身の修道的探究の延長に起こった改革刷新運動でもあったといえるだろう。
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