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facts_3分で社会を読み解く 29
親から子に信仰を継承させようとすることは虐待なのか?

ナビゲーター:魚谷 俊輔

 2022年78日に安倍晋三元首相が暗殺された事件以降、家庭連合に限らず、宗教全般に対する世間の風当たりが強くなり、さらには政府による宗教的活動に対する規制が強まりつつある。

 その一つの兆候として、文部科学省や地方自治体が発行する「児童虐待」に関するパンフレットの中に、宗教に関する事例が入り込むようになったことが挙げられる。

 例えば、「行きたくないよ」と泣き叫ぶ子供の手を母親がつかんで「参加しないと地獄に落ちるわよ」と脅しているイラストが描かれ、こうした言葉で脅して宗教活動などへの参加を強制することは児童虐待に当たると説明しているのだ。

 しかし、何をもって「強制」というのかは非常に曖昧である。
 通常、未成年者は親が監督することが適切であると考えられており、両親がしつけの一環として子供を教会や寺院などの宗教施設に連れていくことは日常的に行われてきた。

 あることをしたり、やらなかったりすると「地獄に行く」、と子供たちに告げることは、保守的なキリスト教会やその他の伝統宗教においては非常に一般的なことであり、これらを「強制」とか「虐待」とはいわない。

 昔はそうした教えを子供たちに分かりやすく教えるため、地獄の生々しい描写を含む礼拝堂の壁画や、仏教の絵巻物などが用いられた。そして牧師や僧侶だけでなく親たちも、重い罪を犯した人は地獄に行くと子供たちに教えていたのである。

 文科省の意図は、家庭連合をはじめとする一部の新宗教の信仰が親から子供へと継承されることを阻止し、それらの団体を「解体」させることにあるのかもしれない。
 「輸血を避ける」ように子供たちを誘導することが虐待に当たるという記述は、エホバの証人を標的にしていることは明らかである。

 しかし実際には、これらのパンフレットが与える影響は、文科省が想定した範囲をはるかに超えて、保守的な宗教団体全体を敵に回すことになるであろう。
 なぜなら、親から子への信仰の継承そのものを、一種の虐待と見なしているからだ。

 日本が署名・批准した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)の第18条第4項は、父母が「自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する」権利を保障している。

 文科省が作成したパンフレットは、この規約が保証する父母の権利を侵害する可能性がある。
 「カルト」対策に性急になるあまり、別の重要な権利を侵害していることに気付いていないのである。

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