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宣教師ザビエルの夢 55

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「宣教師ザビエルの夢」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。
 1549年8月15日、鹿児島に一人の男が上陸した。家族や故郷を捨て、海を渡った男が、日本で夢見たものは何か。現代日本に対する彼のメッセージを著者が代弁する!(一部、編集部が加筆・修正)

白石喜宣・著

(光言社・刊『宣教師ザビエルの夢-ユダヤ・キリスト教の伝統と日本-』〈1999429日初版発行〉より)

第四章 ユダヤ・キリスト教の真髄

五、「私はあなたの神、主である」

第一の律法
 「主を愛せよ」という言葉は、ユダヤの律法の最も重要な戒めです。トーラー(律法)の第一の教えであり、寝ても覚めても覚えるべきものとして教えられてきた言葉です。この命令は、主体である神の存在なくしてはありえません。選民にとっては、死の間際にあっても、地獄のただ中にあっても、決して忘れることのないこの言葉が、極限状態の人間に再び迫ってきたのです。そしてその人を生かした、この不思議。

 イエスは律法学者からの質問に、躊躇(ちゅうちょ)なく答えました。「あなたの神、主を愛せよ」これが第一の掟(おきて)。第二の掟は、これと同じく「己を愛するごとくに隣人を愛せよ」だというのです。これらは、すでにユダヤ人自身が十分知っていることでした。しかしイエスは、そのごとくになせ、と強調したのです。それは、この言葉を生命あるものにせよ、と教えているかのようです。

 「わたしはあなたの神、主である」この十戒の冒頭の言葉は、第一、第二の掟にも及んで、神と人間を結ぶ絆(きずな)となって選民の心に刻みつけられたのです。

 イスラエル建国後、この国では、伝統的なユダヤ教の祭りに新たな祭りが加えられました。その一つが「大虐殺の記念日」と呼ばれるものです。大戦中、捕らえられ殺されていった同胞の運命を、自ら神殿に供えられる生贄(いけにえ)になぞらえて「ホロコースト」と称し、それを記念する一日としました。

 このような祭りに人々は、断食を行い、哀歌を口にし、嘆きと賛美を共にささげます。そしてその歴史を回顧しながら、神によって導かれた先祖たちの道を想起し、自らの未来を思うのです。

 アウシュビッツは、人間の狂気を世にさらけ出す一方で、人間の超越性を歴史に刻みつけました。ナチズムが作り出した地獄で、聖者マキシミリアン・コルベ神父は「友のために生命をささげ」ました。医師フランクルは、そこで生き抜く精神を見いだしました。アウシュビッツは、人類歴史において「神に抗した人間」と「神に開かれた人間」の姿を如実に描き出し、人類歴史に刻みつけたのです。

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 次回は、「みことばの祭儀」をお届けします。


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