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シリーズ・「宗教」を読み解く 328
修道院の祈り㉖
中世キリスト教世界の崩壊の始まり

ナビゲーター:石丸 志信

 14世紀、中世の末期に入り、不安定な時代を迎える。
 教皇と世俗権との対立により、教皇庁がアヴィニョンに移され、フランスの保護の下に置かれる、いわゆる教皇の「バビロン捕囚」とそれに続く教皇の鼎立(ていりつ/三者が互いに対立すること)による西欧キリスト教会の「シスマ」(大分裂)の経験は、統一されたキリスト教世界が崩壊し始めたことをあらわにした。

 不安定な時代状況の中で、修道的な探究は神秘主義的な傾向を強めていく。
 理性主義的なスコラ神学への反動と形骸化した教会に対する反抗は、その中心的な領域を、南欧ラテン地域からアルプスの北、ゲルマン系の諸国へと移していく。

 ライン川流域の諸都市に広がってきた信徒運動を指導したのは、主にドミニコ会の修道士たちだった。
 その中で大きな影響力を持った人物にドイツ神秘主義の祖といわれる神学者マイスター・エックハルト(1260頃~1328)がいた。

 「キリスト信者の目的は、霊において神と合一することであると教え、それには人間の本質を神の本質と融合させて恍惚(こうこつ)的経験によらなければならない」(『基督教全史』ケァンズ著 いのちのことば社 1957年、334ページ)と彼は言う。

 彼の教えは、汎神論(はんしんろん)的であるとして異端の嫌疑がかけられ、その一部は断罪されたが、その神秘主義的思想は同じくドミニコ会士のヨハネス・タウラー(1300頃~1361)、ハインリッヒ・ゾイゼ(1295頃1366)らに引き継がれていく。

 タウラーの説教は修道女らによって書き取られて、およそ80の説教集が遺(のこ)った。
 彼は、離脱の道を「肉体と魂と精神」の3区分に合わせて霊的登攀(とうはん)の3段階で説明している。

 「『外的人間』は道徳的生活によって浄化される。『理性の人間』は、知性と意図と行為の訓練によって浄化されることになる。これらの試練を経て、『内的人間』もまた浄化される。なぜなら『内的人間』は、神によって住まわれ、観想の中で一瞬光明を与えられ、愛によって燃えるからである。事実、人間が神化されるこの頂点においては、愛は認識よりも高次なものなのである」(『キリスト教神秘思想史2~中世の霊性』上智大学中世思想研究所翻訳/監修 平凡社 1997年、572573ページ)

 ゾイゼは、神との観想的合一に至る神秘的諸段階を自らの体験に基づき、詩的に歌い上げ、「ドイツ神秘主義の歌い手、霊的吟遊詩人」(同上 576ページ)と評されている。

 ドイツ神秘主義者の説教は、宗教改革者として登場するマルティン・ルターに影響を与えたといわれる。
 作者不明の神秘主義の小著『ドイツ神学』の断片を発見したルターは、感銘を受けてこれをドイツ語版で出版している。



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