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ダーウィニズムを超えて 70

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第七章 混迷する神なき現代物理学

(三)超ひも理論は統一理論になりえるか

4)余剰次元とブレイン
 1919年、数学者のテオドール・カルツァ(Theodor Kaluza)が、アインシュタインの新しい一般相対性理論を使って、時間と空間が5次元であるとしたら、電磁気と重力を共に含む理論が導けることを発見した。しかし余分の次元がなぜ他の次元とは違うのかという問題があった。1926年、数学者オスカー・クライン(Oskar Klein)が余剰次元は円状に巻かれて、きわめて小さく、10のマイナス33乗センチメートルのプランク長しかないことを示した。この巻き上げられた極小の次元はあらゆるところにあって、空間のどの点も、その微小な円をもっているという。この余剰次元をもつ理論はカルツァ=クライン理論と呼ばれていた。

 このカルツァ=クライン理論が数十年後に脚光を浴びることになった。10次元の時空のうち6次元が巻き上げられて、コンパクト化されるという超ひも理論に取り入れられることになったのである。そして、ひも理論の研究者たちはそれから長い間、余剰次元をプランク長さの次元であると見なしてきた。しかし、最近、この仮定に疑問が投げかけられている。科学者によっては、余剰次元のいくつかは、大きさは無限かもしれないと考えているのである。

 1995年、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョー・ポルチンスキー(Joe Polchinski)は、ひも理論が無矛盾になるためには、ひもだけでなく、背景となる空間で動く、もっと高い次元の面を含んでいなくてはならないことを示した。ポルチンスキーはそれをDブレインと呼んだ。Dブレインにより、10次元におけるさまざまなひも理論が、実は同じ理論の異なる側面であることが示され、Dブレインは喝采を浴びた。なお、さまざまな次元のDブレインを総称する場合はPブレインと呼ばれている。ひもは1ブレイン、膜は2ブレイン、次元が三つある場合は3ブレイン、四つあれば4ブレインと呼ばれる。

 私たちの宇宙は、私たちを取り巻く高次元世界の3次元スライスである。すなわち、私たちの宇宙は高次元空間に張りついている膜あるいは壁のようなものである。あるいは私たちの宇宙は4次元あるいはもっと高次元の空間をもった世界に浮いている膜のようなものである。私たちの3次元ブレインは力と粒子をとどめておける低次元の面であり、高次元空間の境界をなしている。物質も、光子も、そのほかさまざまな標準モデルの粒子も、すべてブレイン上にあるが、重力だけはブレインに閉じ込められていないのであり、重力はバルク(ブレイン間の空間)内に伸びることもできるという。

 リサ・ランドール(Lisa Randall)とラマン・サンドラム(Raman Sundrum)によれば、無限の大きさの余剰次元は一つだけあって、曲がっている。このワープした余剰次元という観点から、重力を含めた四つの力の統一の可能性があるという。さらにワープした5番目の余剰次元は、それほど大きくなくても、階層性問題を解決できるという(*10)。

 理論物理学者のローレンス・クラウス(Lawrence M. Krauss)はブレイン理論の余剰次元について次のように述べている。

 その結果、一気に新たな関心を集めたのが——ご想像のとおり——余剰次元である。ただし、ひも理論研究者による10または11次元の想像に付いてまわる、仮想的で、エーテルに似て、ひょっとするとまやかしかもしれない余剰次元とは違う。鏡の向こうや衣装だんすの奥に文字どおり隠れているやもしれぬ、実在し、手が届きさえする可能性のある余剰次元なのである(*11)。


*10 リサ・ランドール、向山信治監訳、塩原通緒訳『ワープする宇宙』NHK出版、2007年、547頁。
*11 ローレンス・クラウス、斉藤隆央訳『超ひも理論を疑う』早川書房、2008年、243頁。

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 次回は、「超ひも理論は統一理論になりえるか③」をお届けします。


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