https://www.youtube.com/embed/hprSbdHquaY?si=J6rmkR0MPeIm42f

ダーウィニズムを超えて 69

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第七章 混迷する神なき現代物理学

(三)超ひも理論は統一理論になりえるか

 超ひも理論では、自然界の究極の構成材料は振動する小さなひもであるという。自然界のすべての物質とすべての力は、ひもの振動のモードに相当して出現しているのであり、自然界は「ひもが奏でる音楽」によって構成されているというのである。

 超ひも理論が世界中の物理学者に興奮を呼び起こしたのは、素粒子の標準モデルではなしえなかった、自然界の四つの力の統一理論が可能になりそうに思われたからであった。そしてアインシュタインの相対性理論と量子力学の矛盾を解決しうると思われたからであった。

1)ひも理論の誕生
 1970年、南部陽一郎、ホルガー・ニールセン(Holger B. Nielsen)、レナード・サスキンド(Leonard Susskind)は、小さな振動する1次元のひもを素粒子のモデルとすれば、強い相互作用が、およそ200年前にスイスの数学者オイラーがつくりあげた、オイラーの関数でぴったり記述できることを示した。

 しかしながら、このひも理論は光より速い粒子「タキオン」の存在を予言しているように見えた。また、このモデルは26次元と10次元でしか無矛盾でないことが分かり、やがて、ひも理論は支持を失っていった。さらに、点粒子による量子色力学の量子場理論が発展して、強い力を記述するのに圧倒的な成功を収めたために、ひも理論は色あせてしまった。

2)超対称性の発見と第一次超ひも理論革命(198486
 1970年代にまずソ連で、それから西洋で、独自に超対称(スーパーシンメトリー)と呼ばれる新しい理論が現れた。それにより力を運ぶボソンと物質の素材であるフェルミオンに対称性があることが示された。

 超対称の世界では、既知の粒子すべてに対となる別の粒子——それぞれのパートナーで、スーパーパートナーとも呼ばれる粒子——があり、お互いが超対称変換によって入れ替えられるのである。すなわち、フェルミオンをそのパートナーのボソンに変え、ボソンをそのパートナーのフェルミオンに変えるのである。かくして物質と力は超対称性において統一されることになった。

 1981年、クィーン・メアリー大学のマイケル・グリーン(Michael Green)と、カリフォルニア工科大学のジョン・シュウォーツ(John Schwarz)は、超対称性が、ひもだけでなく10次元空間全体の対称性になっていることを証明して、「ひも理論」は「超ひも理論」となった。1984年、彼らが提出した論文のなかで、超対称性を取り入れれば、10次元の超ひもが、厄介な無限がひとつも現れそうにないやり方で、フェルミオン、ボソン、ヤン=ミルズ場、そしてグラビトンを生み出すことを示した。そして四つの力の統一がなされる可能性を見いだした。

 やがて役に立たない骨董(こっとう)品のように見られていた、ひも理論が爆発的に関心に火をつけることになった。超ひも理論は統一場理論のたった一つの希望であり、万物理論(物理学の聖杯)の候補たりうるものとさえ見なされるようになったのである。

3)第二次超ひも理論革命(1995~)——カラビ・ヤウ空間、双対性、ブレイン、そしてM理論——
 超ひも理論では、宇宙の次元が10次元でなければならないとされる。では、なぜこの世界が4次元になっているのであろうか。10次元のうち、6次元の空間がプランク距離に縮んでいるため、われわれは4次元の時空しか観測できないというのである。時空の次元が縮むメカニズムはコンパクト化といわれる。またわれわれのいる4次元世界と別の次元のことを余剰次元という。

 1985年、カンデラス(P. Candelas)、ホロウィッツ(G. Horowitz)、ストロミンジャー(A. Strominger)、ウィッテン(Edward Witten)は、余剰次元を巻き上げるのに、「カラビ・ヤウ空間」(Calabi-Yau spaces)というコンパクト化に気がついた。カラビ・ヤウ空間は、標準モデルの力と粒子を再現できる四次元理論を導く可能性をもっていた。しかも余剰次元を巻き上げてカラビ・ヤウ空間にすると、超対称性が保存された。このカラビ・ヤウ空間の発見によって、超ひも理論は生き残ったのである。

 双対性(そうついせい)も、素粒子物理学と超ひも理論における重要な概念である。互いに異なっているように見えるのに、全く同じ物理を記述している理論的モデルを指して双対性という。

 1990年代初頭には、超ひも理論には次の五つのタイプがあることが分かっていた。タイプⅠ、タイプⅡA、タイプⅡB、ヘテロO、ヘテロEの五つである。1995年にプリンストン高等研究所教授のエドワード・ウィッテンは、これらの五つの理論の間に、さまざまな双対の関係があることを示した。そしてウィッテンは五つの超ひも理論を統合する11次元のM理論が導かれると提案した。超ひも理論はM理論を10次元にコンパクト化したものといえる。

---

 次回は、「超ひも理論は統一理論になりえるか②」をお届けします。


◆『ダーウィニズムを超えて』を書籍でご覧になりたいかたはコチラ