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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

日本製鉄が中国・宝山鋼鉄との合弁解消
USスチール買収へ

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、722日から28日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 ハリス氏、民主党の大統領候補指名確実に(7月22日)。韓国与党 新代表に前法相の韓東勲氏(23日)。日本製鉄、宝山鋼鉄との合弁事業解消を発表(23日)。ペゼシュキアン氏、イラン大統領就任(28日)。マレーシア、BRICS加盟を正式申請(28日)、などです。

 日本の鉄鋼大手・日本製鉄(日鉄)が720日、米国のUSスチールの買収に向け、トランプ前政権で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏をアドバイザーに起用したことを明らかにしました。

 起用理由について「ポンペオ氏は共和、民主両陣営から尊敬されている。米国が直面する安全保障上の課題について、他に類を見ない洞察力を持っている」とコメントしています。

 ポンペオ氏は、同盟国である日本と連携を強め、米国の製造業の基盤を拡大すべきと述べており、背景には中国企業に対抗する必要があるとの立場があるとみられます。

 米国側は、日鉄によるUSスチール買収については全米鉄鋼労働組合(USW)が反対。バイデン大統領は慎重姿勢、トランプ前大統領は買収阻止を訴えています。
 今後ポンペオ氏が調整に動くものとみられます。

 そして日鉄は23日、鉄鋼世界最大手・中国宝武鋼鉄集団の子会社、宝山鋼鉄との自動車向け鋼板の合弁事業を解消すると発表しました。

 ポンペオ氏が助言役になることによって米国側との交渉をより確かなものにする必要があったのでしょう。

 しかし中国からの完全撤退ではありません。主要な顧客である日系自動車メーカーが電気自動車(EV)対応の遅れなどで苦戦していることもあり、今後、生産能力を約7割減らし、食品の缶で使うブリキの生産を行う合弁会社など他の事業は継続する方針だというのです。

 日鉄の歴史は「日中関係」が柱の一つです。戦後の日中経済協力の象徴だったのが近代製鉄所建設でした。
 日鉄は、日中国交正常化後の経済協力の目玉として1970年代に建設が始まり、1985年に完成した中国・上海市の「宝山製鉄所」に技術協力しました。

 山崎豊子氏の小説『大地の子』は、この建設事業がモデルとなったのです。

 後に中国の最高指導者になる鄧小平副総理が千葉県君津市の製鉄所を視察して、「これと同じ製鉄所が欲しい」と話したことが、日鉄の中国事業の源流にあるといいます。

 工事は一筋縄ではいかず、支払い条件変更や契約キャンセルなどのトラブルで両社は何度も折衝したといいます。
 技術指導などで日本側は述べ1万人が訪中したといわれています。

 しかし今、「蜜月」の終わりがきました。一因となったのは、特許権侵害を巡る2021年の訴訟です。
 日鉄が、電気自動車などのモーターに使う鉄鋼製品「無方向性電磁鋼板」で特許権が侵害されたとして宝山鋼鉄(社名はその後の合弁などで変わっている)を提訴したのです。

 もう一つの転機は、中国の自動車産業の構造変化でした。
 中国は今、電気自動車など新エネルギー車で世界を引っ張っています。それに伴い、日鉄の重要顧客である日系自動車メーカーはシェアを落としたのです。

 中国の鋼材不況の低迷も影響しています。不動産不況の長期化で、世界の半分の粗鋼生産能力を持つ中国鉄鋼大手の汎用品鋼材は行き場を失い、中国の低価格製品輸出の攻勢によってアジア・世界の鉄鋼業は打撃を受けているのです。
 中国への抗議の声は高まっています。

 日鉄の戦略は今後、米国とインドへのシフトです。
 米中対立を背景に厳しい国際情勢に対応する「賭け」でもあります。米中分断で逆風が吹く中国事業を縮小し、米国やインドに経営資源を集中させる方向なのです。
 その結果が、昨年12月の米鉄鋼大手USスチールを約2兆円で買収するという計画の発表だったのです。

 インドでも日鉄は投資を進めています。ミタルとの合弁事業計画です。
 2025年以降の稼働を見据えており、一連の投資額は1兆円を上回る規模になります。
 世界は大きく変わろうとしています。



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