2024.07.17 17:00
共産主義の新しいカタチ 21
現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)
「プロレタリア独裁」否定し「ユーロ・コミュニズム」潮流へ
レフ・トロツキー➁
トロツキーを懐柔して利用したレーニン
さて、「新主流派」となったレーニンはトロツキーの「分派主義」を指弾しても、「粛清」はしませんでした。トロツキーの指導力を買い、利用したのでしょう。だからレーニンの遺言となった「最後の手紙」に、「(粗暴な)スターリン書記長」の選択が「ソ連帝国」を誤らせる結果に導く、と危惧したのです(「手紙」は公表されず)。
レーニンは1921年にコミンテルン第3回大会後の幹部委員会でトロツキー擁護の演説を行い、1922年末の「大会への手紙」で、トロツキーを「現在の中央委員中で最も有能な男」と評価したのです。
結果的にトロツキーはレーニンの奉ずる「プロレタリア独裁・民主集中制」という「鉄の規律」を受け容れ、ソビエト連邦の誕生に奔走。革命後しばらく続いた内戦では、赤軍派を組織・統率します。しかし1924年のレーニン没後、失脚。スターリン支配下のコミンテルンと訣別し、「第4インター」創設の道を探ることになります。
スターリンの策略に嵌められ失脚・暗殺
1924年、レーニンの死に際しトロツキーは、スターリンからその知らせを受けず、葬儀に参列できませんでした。「レーニン後」のボリシェヴィキは結局、書記長スターリン・ジノヴィエフ・カーメネフの「3人組」体制で進められます。そして「反革命」のレッテルを貼られ、国外追放の末にトロツキーは1940年、スターリンの刺客に暗殺されます。
こうした経緯からトロツキーに対する同情は、「判官(ほうがん)びいき」の感があリ、トロツキーは「悲劇のヒーロー」視され、日本の左翼運動でもスターリニズム批判の象徴となりました。
「レーニン主義」の使徒としてスターリンの「粗暴さ」は、「ボルシェヴィキの突然変異」とは決して言えません。スターリニズムは、トロツキーによる指摘を待つまでもなく、死後その後継者たるフルシチョフの批判で、国際的に暴露されました。
さてトロツキーは、「第4インター」設立に際した「過渡的綱領」の中で、「スターリニズムはボリシェヴィズムに対する裏切りである」としています。この時点でも、「レーニンはあくまで正しい」というレーニン無謬(むびゅう)論です。スターリン体制をあれだけ非難しながら、レーニンに対し偶像視しています。ところが、軍事史家ドミトリー・ヴォルコゴーノフがつまびらかにする実態は、「レーニン及びボルシェヴィキこそ諸悪の根源」と断言するのです。
トロツキーには『文学と革命』のように、「プロレタリア文化革命は誤り」と現実的なものの見方をする側面はありますが、レーニンとボルシェヴィキに対する態度は、彼自身が非常に矛盾しているのです。
トロツキーが「第4インター」を設立に際し採ったスタンスは、「スターリン体制の打倒」で、目指すは「複数政党制を認め根付かせる」点にあるからです。
ヴォルコゴーノフは、レーニン・トロツキー・スターリンという「革命三傑」の評伝を、機密文書を駆使し書きました。彼は「ボリシェヴィキ独裁がなぜ続き、ロシア民衆もなぜ容認したのか」を問いました。
ヴォルコゴーノフによればトロツキーは、ロシア革命の「立役者」であり、「卓越した組織力と人身掌握術」によって「赤軍」を指揮し、レーニンの「手先」で、おぞましいテロ「実行犯」だったと言えるのです。
これは、オウム真理教による一連のテロ事件に照らし合わせてみるとわかりやすいでしょう。個人的にはいくら殺人・テロは人道にもとると考えていたとしても、教祖・麻原の「鉄の規律」の前ではそんな思考は停止せざるを得ない。しかし、全ての責任は麻原だけなのかと言えば、実行部隊の責任者にはやはり死刑もしくは無期懲役という判決が出されています。
この大いなる矛盾を打開するために、トロツキーとしては「レーニンは正しい、悪いのはスターリン」と開き直るしかないのです。何しろ「永続革命論」を唱えるわけですから、「革命」の前にはテロでも何でも正当化されるのです。
しかし今日、トロツキーの第4インター派が、欧州で少数ながら勢力を保つのは、初期指導者が「反ナチズム」のレジスタンス運動に関わったことに起因します。EUから見るトロツキー像は、十月革命とその後の内戦における赤軍の指導者としてよりも、「反スターリニズムの旗手」としての方が強いのでしょう。
ヴォルコゴーノフによれば、トロツキーの第4インターも、ボリシェヴィキ=ソ連共産党の70年の支配も「幻想の中に生きていた」のです。ボリシェヴィキの下におけるトロツキーは、レーニンの意向に極めて忠実で、実行力のある実務者であり、決して「悲劇の英雄」ではありません。
★「思想新聞」2024年6月1日号より★
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